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日本の10年国債がマイナス利回りに - 低金利の弊害

マイナス金利(事実上)導入された日本ですが、今日はついに10年国債の落札利回りがマイナスになってしまいました。

財務省が今日午後に発表した表面利率0.1%の10年利付国債(342回債)の入札結果によると、平均落札利回りがマイナス0.024%、最高落札利回りがマイナス0.015%と、ともに初のマイナスとなった
>>超長期債が大幅高、20年・30年・40年利回り最低-10年入札通過で安心

落札利回りがマイナスと言う事は、平たく言えば、借入額より返済額が少なくなる事です。
100万円借りたら、10年後に99.9万円返済すれば良いわけですから、借りている側の日本政府は借金をすればする程利益が出るわけです。
日本政府は笑いが止まりませんな。

さて、これはこれで重要ですし、マイナス金利が導入された事もニュースである通り重要です。
しかし、もっと重要なのは異常な低金利が続いており、しかも一段の金利下落が予想される事です。

こちら↓は10年金利の長期の推移(月足)です。
長期のトレンドを見ても延々と金利の低下が続いている事がわかります。

1988年からの金利の推移

DreamVisor.com:551 長期金利 (為替・債券 )

教科書的に言えば、金利を下げる事で企業はお金が借り易くなり、生産を拡大させ経済は良くなると言う様に言われますが、それは金利が一定程度高い水準にあり、経済学がまともに機能している時の話しです。

ここまで金利が低くなると、リスクの高い中小企業に貸し出しても高格付の企業に貸し出してもあまり差が出なくなってしまい、結局高格付の企業にばかり融資が集まってしまいます

また、大手と中小への貸出金利差が縮む事で融資が薄利多売になりやすくなります
しかも、今後さらに事態が酷くなる可能性あります。

そうなると少人数で多くの資金を動かせる、金融商品への投資に業務がシフトしていきます。
公募債への投資なら、融資の様に対象企業へ訪問したり、ニーズを聞く必要もありませんから少ない人手で大量の銘柄を捌けます。

こうして中小企業への貸し出しは少なくなっていきます。
こちら↓は金融機関の貸し出しと預貯金の比率を表した「預貸率」の推移です。

預貸率の推移

国土交通白書2014:民間金融機関の国債保有残高と預貸率の推移
理経済:お金がさっぱり回らない

100%に近い程、預金を金融機関が貸付に回していると言う事です。
通常、金融機関(特に銀行)は顧客から預かった預金を、別の企業や個人への貸付に回しますが、これが低いという事は、貸付がうまく行われていないという事です。
これが信用創造に繋がるわけですね。

もちろん、企業側にニーズが無いという事も考えられますが、世界と比較しても非常に低い事を考えると、景気や企業の問題だけではない事は明らかです。
社債等の直接金融にシフトしているとも考えられますが、金融先進国のアメリカより発達しているとも思えません。

世界の銀行預貸率

日本銀行:アジアにおける金融:バンキング・ビジネスと資本市場 PDF
Murray Hill Journal:預貸率の国際比較 from 日銀資料
白川前総裁のコメント

個人の自己防衛による預金増もあるでしょうが、貯蓄から投資へとか言っている昨今に、この預貸率は酷いです。
如何に融資をしていないかが良くわかります。

以上の様に、経済学は現在の様な異常な低金利ではうまく事態を説明できていません。
経済学は過去からの経験に立脚しているのですから、現状を見て適宜修正しないといけないはずなのですが、不思議とお金をばら撒けば何とかなるという部分は見直されず、緩和を求める声は大きいままです。

マイナス金利の解説は大量にされていますが、意外と貸し出しがうまくいっていない事実や経済学がまともに機能しない状況にある事は報道されません。

マイナス金利も大事だとは思いますが、問題とは往々にして随分前から芽が出ているものです。
それにばかり目を向けていると、長期の流れを見失う気がしてなりません。
マイナス金利など、このトレンドの前には小事にすぎません。

日銀前総裁の白川さんはこの辺りの事を正しく理解していた様ですが、大衆には勝てませんでした。
現在の金融政策は、むしろ経済にとって逆効果としか思えませんな。

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