米国の採用面接の変化 - 実質定年が下がっている
昨今のアメリカでは、賃金の伸び率の停滞からか、就職面接の際、早々に給料の話が出る様になっているです。
求職者と雇用主の給与提示額が大きく食い違っている場合、選考プロセスを進めるだけ無駄になるからです。
電子エンジニアとして20年余りのキャリアを積んだピート・エドワーズさん(53)は6ケタに上る給与をもらっていた。だが今、レイオフで仕事を失い、求職中のエドワーズさんにとって、前職の高給が重荷となっている。…(中略)…採用担当者らは給与について早めに聞くことで、人件費を抑える一助になると指摘する。…(中略)…応募者をふるい分けるこの方法は賃金の伸びが停滞するひとつの要因かもしれないと分析するアナリストもいる。
>>高給取りは門前払い-再就職に苦しむ求職者
![]()
左図:1時間当たりの米平均賃金の前年比の推移
右図左:失業期間別にみた最終後の給与額の増減(グレー:減額、クリーム:同じ、緑:増額)
右図右:年齢別にみた前職と転職後の1時間当たりの賃金比較(2012年)
アメリカにもデフレの足音が近づいているのでしょうか。
賃金の伸び率の鈍化が消費を抑え込みインフレ率を下げる事にもなるのですが。
この面接手法はある意味合理的なわけですが、一方で妥協点を満足に探らない為、賃金を抑え込む形になりがちです。
雇用主と求職者の提示額の乖離に対し、許容額を何処に設定するのかにより、影響は大きく異なるでしょう。
この匙加減は相当微妙でしょうから、雇用主が安きに流れるのは致し方ないとも言えます。
さて、これによる問題や弊害は多々あると思いますが、私が気になっているのは、この記事に出てくるエドワーズさんの様な、年齢の高い方々についてです。
ポイントは定年の年齢。
日本では一般的な定年制度ですが、アメリカでは年齢による差別が禁止されている為、定年がありません。
この為、本人が希望する限り働き続ける事が出来ます。
シニア活用:世界の定年制―アジア~アメリカ~ヨーロッパ―
ガベージニュース:米平均退職年齢は62歳に上昇、でも「66歳まで働きたい」
しかし、この話には続きがあり、年齢による定年は無いものの、給与水準による「自主的」な定年退職があります。
「自主的」なので、その年齢は経済状態によって変化します。
年齢の高い方は、それだけキャリアも積んでいますから、給料も高くなりがちです。
いずれかの段階でキャリアに対する給与と会社側が求める給与の乖離が大きくなります。
労働者はその段階で給与水準を大きく下げるか、定年退職するかを考えるわけです。
今回の事例を見ると、長引く不況から来る賃金の伸び率の低下から、このキャリアに対する給与が下がっている様に見えます。
採用方法が変わっているだけにも見えますが、それはある種の方便で、本質はキャリアに対する予算が削られているというのが実態なのではないでしょうか。
そしてこれはアメリカの実質の定年年齢が、次第に下がってきているとも言えます。
キャリアを積みすぎると、日本の定年延長の様な形で賃下げに甘んじるしかないわけです。
決して良い状態とは言えませんね。
そして、定年間近だった労働者からすると、当初60歳そこらまで働いて老後の資金を貯める予定だったのに、梯子がはずされてしまったわけですから、老後の不安は大きそうです。
低賃金でも良いからと、労働市場に逆流してきて、混乱が起きそうです。
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 配慮のしすぎも考え物 - 人吉市の取り組み(2016.10.06)
- 日銀の総括検証 - 手のひら返しが酷い(2016.09.21)
- 銀行外しが着々と進む② - 証券化ビジネスのネット化(2016.09.02)
- 銀行外しが着々と進む① - 債権補償の充実化(2016.08.30)
- 日本の10年国債がマイナス利回りに - 低金利の弊害(2016.03.02)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント