欧州車の攻勢② - 買換え需要狙いか
シリーズ後編です。
前回は外車、特に欧州勢が日本に参入するデメリットについて考えてみました。
日本市場の縮小や時流によって、販売台数が伸び悩む事が目に見えており、態々力を入れてマーケティングするメリットが薄れています。
しかし一方で、下記の様なメリットもあります。
この程度のメリットでは向かい風には勝てない気もしますが…。
- 金融緩和が限界なので円安ユーロ高の懸念が少ない
- 輸入自動車の関税がない
- そうは言っても世界第3位の販売台数を誇る、世界有数の市場
- いくつかのデータでは日本に購買の余地がある
- 買換え需要が発生しそう
日本では、完成した輸入車に対して関税をかけていません。
低いのは知っていましたが、完全に撤廃されているんですね。
お恥ずかしい話ですが調べるまで知りませんでした。
日本自動車工業会:日本の自動車産業としてのWTO新ラウンド及び 自由貿易協定(FTA)への期待について
欧州・米国間では自動車の関税がまだ残っていますから、日本のそれはかなり開放されていると言えます。
この点は欧州勢に有利に働きます。
ロイター通信:欧米FTA交渉、EUが関税96%撤廃を来週提案へ=関係筋
また、日本の販売データ等を見ているとまだ余裕がありそうです。
こちら↓は自動車の販売と生産の図です。
みずほ銀行:わが国の自動車産業における国内生産の行方 PDF
先進国の場合、生産と販売がほぼ一致しているか販売の方が多いのに対し、日本は生産の方が圧倒的に多いという特徴があります。
お国柄もあるのでしょうが、人件費が高くなりがちな先進国で生産が多くなのも不思議な話です。
現地生産が盛んという流れとも対立していますね。
技術面やロボットの普及率の問題なのでしょうか。
こうやって見ると、日本での販売余地はもう少しありそうな気がします。
他にも、こちら↓の図を見ると、全体的に自動車の使用年数が延びている事がわかります。
みずほ銀行:わが国の自動車産業における国内生産の行方 PDF
自動車検査登録情報協会:車種別の平均車齢推移表 PDF
自動車事態が壊れ難くなった事や不景気による買換え手控え、新車が販売不振となっている点等が絡み合い、新陳代謝が悪化したことで自動車の老朽化は日に日に進んでいる事がわかります。
平均車齢は、乗用車の場合2014年の段階で8.13年となっています。
自動車の寿命は走行距離で考えるのが一般的ですが、そう言っても15~20年が限界でしょう。
そう考えると、後5年もすればボチボチ新車への買換えやタクシー・カーシェア等の代替手段の需要が生まれるでしょう。
欧州勢はカーシェアもお手の物ですから、この辺りとセットで販売するために、先行投資として日本でのマーケティングを行っているのではないでしょうか。
5年後といえば、2020年。
オリンピックの年であり、ちょうど水素電池の普及が本格化する時期です。
久しぶりの大型販売合戦になるかもしれませんね。
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 配慮のしすぎも考え物 - 人吉市の取り組み(2016.10.06)
- 日銀の総括検証 - 手のひら返しが酷い(2016.09.21)
- 銀行外しが着々と進む② - 証券化ビジネスのネット化(2016.09.02)
- 銀行外しが着々と進む① - 債権補償の充実化(2016.08.30)
- 日本の10年国債がマイナス利回りに - 低金利の弊害(2016.03.02)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント