金融マンの投資事情① - 地場受けと地場出し
最近株が好調ですね。
上昇は兎も角、こんなにイケイケになるのはちょっと意外ですが、「政策に売りなし」と言う事なのでしょうか。
(資力のある)政府が株高を演出しようとしている以上、それに逆らうのは得策ではない様です。
世間ではバブルとの声も聞かれますが、声が聞こえているうちはバブルではないでしょうな
その好調な市場からの追い風を受け、証券部門は営業部を中心にホクホクな様で、一昔前と異なり、アドバイスを求めてくる顧客が多いらしく、営業成績が積み上がっているとか。
また、株を買おうかという呟きもチラホラ聞きます。
さて、金融機関にいるとお勧めの(というか上がる)銘柄を屡聞かれます。
回数は株価と連動して増加するのですが、往々にして手堅い銘柄か新聞に載っている様な、定番な答えしか返せません。
なぜそうなのかと言うと、主に規制産業である金融機関に存在する、2つの鉄の掟に由来しています。
山崎元の時事日想:金融マンだけではない。マスコミ関係者もインサイダーに注意せよ
1つ目は「断定的判断の提供」です。
これは「○○は(必ず)上がる」と言う様な論調で銘柄推奨等を行う事です。
営業マンの過剰な前のめり営業を牽制する為の規則ですなのですが、仕事外で推奨銘柄を述べ、その結果、それを聞いた人がその銘柄を買って損をしたりすると面倒な事になります。
結果、無難な回答や曖昧な回答が大勢を占める様になります。
尤も、この規制については仮に無かったとしても、仕事上人間のがめつい部分を普段から見ている金融マンは、自身のリスク回避の為に早々やりません。
お金の恨みで人は豹変します、マジで。
もう1つは「地場受け・地場出し」という規制です。
この規制もあって、金融機関の人間は、自分のお金で株取引をした事がないという人が多くなっています。
協会員の役職員が、他の協会員に有価証券の売買注文を出すこと。…(中略)…書面による承諾をしている場合を除き、日本証券業協会の規則により禁止されている。
>>地場出し協会員が、他の協会員の役職員から…(中略)…有価証券の売買注文を受託すること。自主規制規則において、協会員が地場受けすることを禁止している。
>>地場受け
協会員とは証券会社を中心とする金融機関です。
必ずしも証券会社だけを指すわけではなく、規制の範囲は結構広範です。
(受けるのは大概証券会社ですが)
規制は注文する側とされる側の両方に課せられており、金融マンは売買を大幅に制限されています。
図示すると概ねこんな↓感じです。
多少の差はあれ、何処の証券会社でも似た様なフローをとっている様です。
ちなみに、自己の資金で取引をする事を「手張り」と言います。
見てのとおり、相当面倒です。
上司や法務部に回覧されるため時間がかかりますし、社内規程によっては銘柄毎に書かないといけません。
また、売買注文の度に書かねばならず相手方の審査もあるので時間がかかります。
さらに申請の効果は1週間程度しか持たず、約定の有無に関わらず、注文するだけでも書かなければならないので、かなり面倒です。
結局、積極的に投資をしようとすると申請を大量にする事となり、上から目をつけられると言う理由から取引があまりされない訳です。
これだけでも大変なのに、別の規制も加わってくるので、世間が思っているより取引経験が乏しい人が多くなります。
金融商品に詳しく、色んな投資家に売り捌いている人でも、自身ではポジションを持った事がない、相当昔に少しやったと言う様な人が私の周りにも結構います。
そうなると中々投資家が儲かる様な銘柄は発見し難いわけです。
この規制は昭和56年頃からある様ですが、日本のバブルも、案外この辺りが原因なのかもしれませんね。
投資した事がない人が投資商品を売ると言うのも変な話なのですが、現状はそうなっている訳です。
規制の意図はよくわかるのですが、長期的に見てどうなのでしょう。
これはこれであまり良い影響は与えない様な気もするのですが…。
続く…
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