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なぜトヨタは燃料電池車の特許を開放したのか① - 3つの狙い

皆様もご存知のとおり、トヨタ自動車水素を使った燃料電池車の関連特許を無償公開しています。
公式リリースと日経の狙いはこんな感じです。

トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、燃料電池自動車FCVの普及に向けた取り組みの一環として、トヨタが単独で保有している世界で約5,680件の燃料電池関連の特許(審査継続中を含む)実施権を無償で提供する、と発表した。・・・(中略)・・・これらの特許実施に際しては、特許実施権の提供を受ける場合の通常の手続きと同様に、トヨタにお申し込みをいただき、具体的な実施条件などについて個別協議の上で契約書を締結させていただく予定である。
>>トヨタ自動車、燃料電池関連の特許実施権を無償で提供

苦労して開発した技術を自社で抱え込むのでなく、社外にも開放することでイノベーションを加速する。そんな大胆な試みにトヨタ自動車が乗り出した。・・・(中略)・・・多くの仲間たちが競い合いながら燃料電池車を事業化することで消費者の認知も高まり、各国の政府も普及支援に本気になる。そしてインフラ投資も回り始める
>>注目したいトヨタの特許戦略

日経の解説する狙いについては、、、まあノーコメントで。
トヨタの公式リリースには、特許の無償開放を言いつつも、価格が0なだけで個別協議や契約が存在することが記載されています。
ここがカラクリの一つとなりそうです。

言うまでもありませんが、トヨタの特許開放はトヨタの経営者にとっても極めて重要なことです。
何せ、無償開放により本来儲けられたお金が儲けられないわけです。

いったいいくらになるのかはわからないですし、結果的に開放した方が儲かるのかもしれませんが、会社資産の私的流用として株主代表訴訟が起こるかも知れませんから、必死になります。

ただただ普及を考えるのであれば、政府に高額で貸与しそこから使えるようにするとか、一括で買ってもらうとか、色々やりようがあるでしょう。
当然それなりの狙いがあるわけでしょう。
今シリーズはそんなお話です。

さて、前置きはここまでとして、まず私の考える"狙い"を記載します。
彼らの狙いはこんな感じでしょう。

    1. 水素インフラの普及、認知度の向上
    2. OSの支配により他社の開発をコントロール
    3. ハイブリッド技術の優位性

では1番から順に解説していきます。
1番は表の理由兼裏の理由で、日経新聞など多くのメディアが報道し、トヨタ自身が豪語するお話です。
まずは自動車の歴史をざっくり見てみます。

wikipedia:電気自動車

自動車は自転車より遠くまで行け、一方で鉄道や飛行機と違い行ける場所の制限が緩くなっています。
とても小回りが利き遠くまで行ける便利な道具です。
しかし、遠くに行く為にはエネルギーの補充が必要です。

自動車が普及した約100年前、現在のようなガソリンエンジンの自動車だけでなく、電気自動車もありました。
歴史的には電気自動車の方がガソリン車より早く登場したらしく、当時は自動車と言うより小型の電車だったみたいです。

しかし、(現代でもそうですが)一回の充電で走れる距離が短く、それでいて充電時間が長いため、ガソリン自動車に市場を奪われてしまいます。
現在では電気自動車を普及させるために電池をガチャガチャ入れ替える方式や、止まる所(バス停、信号など)でチビチビ充電する方式などもありますが、それですらパッとしません。
技術的が揃っていなかった当時、電気自動車の敗北は必然だったのでしょう。

その後何度か電気自動車は注目されたものの、数分でエネルギーチャージが完了するガソリン車の利便性に勝てず仕舞いでした。
その上、ガソリン車の普及に伴いガソリンインフラが整ってしまい、電源インフラの入る余地がなくなってしまいました。

普及とインフラは車の両輪の様なもので、両方セットで普及させる必要があります。
また、どちらかと言えばインフラの方が先行します。
一方で、インフラが整ってしまうと物理的・心理的に別のものが入るスペースは少なくなります(所謂、経路依存性)

化石燃料インフラ後から割り込むことになる水素ステーションは、これに打ち勝つ必要があり、普及コストは兎に角安い方がいいわけです。

ではガソリンインフラはというと、原油が(随分安くはなりましたが)相変わらず高止まりしているもののガソリンスタンドには恩恵が無く、地域での競争が激化、消防法の改正まで加わり青色と息を通り越してバタバタ死んでいます。
水素組はそこに入る事もできるので、いくらかやり易いかもしれません

今回の特許開放はインフラ普及組である政府やJX等を後押しすることに繋がり、今後の水素社会に貢献することでしょう。
10年後にはステーション1000ヶ所、車両200万台という予想も出ています。
(ちなみに日本では2012年末に約6000万台の乗用車が走っています)

水素給油インフラ

JX日鉱日石エネルギー:水素エネルギー社会への取り組み

必然、水素自動車は売りやすくなり、結果的にトヨタの利益にも貢献すると言う筋書きなわけです。
多くの新聞で書かれている狙いはそんな感じです。
これは建前でも本音でもあり、嘘ではないでしょう。

しかし、これだけだと疑問が残ります。
これだけだと利益に貢献するかどうかはその時になってみないとわかりません。
もしかしたら、自分達の長年の研究を踏み台に、もっとすごい物を他社が作ってしまうかも知れません。

また前述のように、トヨタが全くお金を貰わずに特許を開放しなくてもいいかもしれません。
やりようはいくらでもあります。
他に自身の優位性を保つ手法は無いのでしょうか?

次回に続く・・・

理経済:なぜトヨタは燃料電池車の特許を開放したのか② - OSの重要性
理経済:なぜトヨタは燃料電池車の特許を開放したのか③ - ハイブリッド技術の拡張

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