ソニーの戦略③ - 狙いは不動産投資による電器復興
ここまでソニーの不動産戦略を理解する為に必要な事項を見てきました。
ここからが本題となります。
理経済:ソニーの戦略① - 不動産事業への参入について
理経済:ソニーの戦略② - REITの仕組み
ソニーが不動産を利用して何をしようとしているかを考えると、ソニー製の電器製品を売りたいのではないでしょうか。
仕組みを図示すると、以下の①~③の様になります。
登場人物はソニー本体、ソニー不動産(件の不動産事業部門)、投資家です。
資金繰りは全員円滑に行われ、手数料も無視できるとします。
①
まず、ソニーが種銭となる1.5億円をソニー不動産に出資します。
また、ソニーの製品を作る為に、4千万円で原材料を購入します。
ソニー不動産は、ソニーからの出資額の内、1億円で賃貸用のビルを購入します。
②
賃貸ビルにもテレビやAV機器等の家電が必要です(無くてもいいのですが、あっても問題にはなりません)。
なのでソニー不動産はソニーから5千万円で商品を購入します。
購入した商品の原材料は①の時に買ったものなので、4千万円です。
結果、差額としてソニーには家電の販売代金から原材料価格を引いた1千万円(つまり付加価値分)が残ります。
また、ソニー不動産はお金が空になりますが、計1.5億円の家電(ソニー製)付きビルが残ります。
③
最後に、ソニー不動産が保有する家電付きビルをREITの形で投資家に1.5億円で買ってもらいます。
「ビルの管理や顧客の呼び込みは当社(ソニー不動産)が行います。家賃収入から経費を引いた差額を配当します。投資額に対し年3%程度の利益が見込めます。」
こんな感じで投資家を呼び込むわけです。
最後に、ソニー不動産が得た1.5億円は、配当や減資によってソニー本体に還流されます。
これでソニーの不動産投資分は±0になります。
ソニーは傘下に銀行も保有していますし、ネット証券のマネックスとも関係が深い ので、販売窓口は十分です。
NISAも追い風ですね。
ソニー銀行でしか買えないREITとして広告材料になるかもしれません。
ビルの購入費用が多少大きくても、数千人でお金を出し合えばさして問題ありません。
売れる不動産を見抜く必要もありますが、コンサルを雇えば解決します。
コンサル費用もメンテ費用も経費として必要経費となる為、実質投資家持ちです。
不動産価格が下がっても投資家が負担します。
傘下に損保も抱えているので火災保険等も割安に導入できます。
結局、REITを販売した段階でソニー側の負担は(ほぼ)ゼロになります。
最終的には、投資家がソニーの製品を買った事になる為、不動産事業参入とは言いながらも、実は電化製品を売る為の仕組みに変えられると言うわけです。
この仕組みを利用すれば、今までは個人向けに販売していた商品を企業に売る(貸す)事も可能ですし、個人からの資金流入だけでなく、投資家からの資金流入が見込めます。
家電量販店に買い叩かれる事もありませんし、彼らの利益分だけ割安に卸す事も可能です。
また、ソニーは先日ノートPCのVAIOを売却すると発表していますが、これとも整合性があります。
家電付きオフィスにノートPCを付けるのは珍しいですし、多分入居者も別のPCを持ってます。
PCで重要なのは中身のデータですから、オフィスについてくるPCは使い辛いと言うのもあります。
この様に、不動産参入と言う部分だけがクローズアップされているのですが、思うに、ソニーは不動産のリスクを取るつもりは無いのだと思います。
イオンも似たような仕組みを使っていますが、ソニーの狙いもここにあるのではないでしょうか。
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コメント
ソニーは金融屋ですねwそういえばパナソニックが運営する老人ホームの家電はパナ製というのテレビで見た記憶が。他業界進出で蓄積されたノアハウが開発へフィードバックされればいいんですけどね。
投稿: すー | 2014年4月27日 (日) 14時27分
すーさん
コメントありがとうございます。
なんだかんだ言いつつも金融が理解できないと
お金の流れを理解できず不利な立場に立たされます。
ソニーの場合、まだ本業をてこ入れしようとしている分ましな気もします。
稼いだ分が研究開発費とかに流れればいいのですが。
投稿: なる | 2014年4月28日 (月) 06時16分