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2013年11月

農業の弱さは構造的なもの

TPP参加で弱体化が叫ばれ、追い討ちをかけるように減反政策まで無くされそうな日本の農家ですが、危機に瀕しているのはもっと根本的なものが原因のようです。

古滝さんの近隣50軒のうち、後継者がいるのはわずか4軒で、あとは高齢者が水田の面倒をみている状況だ。人口は減少し、地域の小学校は2校が閉校となり、今は1校しかない。  古滝さんは「結婚して世帯を持つと、子供の通学できる学校がないので、大きな町に移ってしまう」と話す。中学校の生徒は1学年にわずか6人いるだけで、野球チームさえ作れないという。
>>世界との競争に備える日本のコメ農家―新たなビジネス模索する動きも

1反歩の土地を一生懸命耕して得られるお米は、金額にして10数万円だとか。
儲けなんて無いに等しいわけですから、将来がある若い人にとっては辛い仕事と言えます。

減反政策やら何やらで補助金は貰えるのかもしれませんが、暇すぎる職ってどうなんですかね。
「退屈は神を殺す」なんて言葉を見かけて記憶がありますが、強ち間違ってはないかも。
また、補助金減らされたので転職しようと思っても、中々難しいように思います。

農業が難しいのも後継者不足なのも昔から知られていた事なので、自身で輸出したり、外国人留学生を受け入れて後継者にする事は、以前から多くありました。

ようこそ、糸島現代GPホームページへ:留学生農業体験'10
フロントランナー:コメ輸出農家 玉木修さん

随分前からドっ力していた人を横目に、日本の多くの農家は何をしてきたのでしょうか。
一定程度の競争が無いと、やはり努力しなくなってしまうのでしょうか。

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貿易統計を比較してみた - 日本と韓国

韓国が標準時を変更するそうです。

MSN産経:日本と同じはイヤ? 韓国標準時の変更を 与党議員が発議「日本帝国主義時代の残りかす」

まあ発端は兎も角、これはこれで面白いかもしれませんね。
東経127.5度というと、日本から30分の時差がある位置ですが、見方を変えると中国から30分ずれた位置でもあります。

中国標準時

夏時間と冬時間を使って、夏は30分早めて日本と同じ、冬は30分遅らせて中国と同じにすれば、観光客を誘致する上で有利に働くでしょう。
夏冬時間は標準時を変えるより楽に変更できるでしょうし。

さて、ここらで少し話題を変えて韓国と日本の貿易について見てみます。
前述の件もあるので国別メインで探してみました。
まずは日本から。

日本の輸出

日本の輸入

財務省貿易統計:地域別輸出入額の推移(グラフ)

なんで日本の統計は加工しにくいフォーマットになってるんでしょうか…。

次に韓国。
韓国は国別の統計があったので、貿易収支で上下5位ずつ掲載してみました。
細かい数値が気になる方はリンク先を見てください。
今回は国名がハッキリ書かれているものだけで集計しました。

韓国の国別貿易収支

JETRO:韓国 輸出統計(国・地域別)
JETRO:輸入統計(国・地域別)

こうやって見ると、米国よりも中国や香港の貿易黒字が大きいんですね。
香港は輸入が極端に少ないのに輸出は多いので、収支は大きくなっています。
香港が韓国製品を色々買っているというのは初耳でした。
何買ってるんですかね。

中国はダントツで1位。
最近の韓国は領土問題にしても外交問題にしても、日本を敵視して動いているというより、中国を意識して行動している様な気がしますが、これを見ると納得できます。

一方、貿易赤字は日本とオーストラリアが大きくなってます。
鉄鋼やウランなど、資源が豊富なオーストラリアから随分輸入している様です。
日本からはパーツ・部品関係ですかね。

反日行動は、案外技術の自国回帰を促進するためのパフォーマンスなのかもしれませんね。
政治と経済は密接に関係してるというわけです。

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サムスンがアップルに敗訴 - サムスンとトヨタの比較

サムスンアップルの特許訴訟に負け、多額の賠償金を支払う事になった様です。

韓国サムスン電子が米アップルの携帯端末の特許を侵害したとの評決が出た裁判で、米カリフォルニア州の連邦地裁の陪審は21日、サムスンの一部賠償額の再審理を終えた。米メディアによると、賠償額は当初の約10億5千万ドルから約9億3千万ドル(約930億円)に減った
>>サムスン賠償は930億円 アップル特許侵害で米地裁陪審が再算定

ネットでは、すでにサムスン破綻的な書き込みが多数行われています。

おーるじゃんる:【韓国経済】うわぁぁぁサムスン逝ったぁー! 米連邦裁判所「てめぇらの負けだ!賠償金払え、ウォン?ドルだぜwww」 賠償金額wwwww

賠償額は確かに大きいですが、私の記憶では金額は相対的に小さかった気がしましたので、調べてみました。
ついでに規模感を確認するためにトヨタと比較してみました。

サムスンのPLvsトヨタ自動車のPL

サムスンのBSvsトヨタ自動車のBS

サムスン電子:SAMSUNG ELECTRONICS ANNUAL REPORT 2012
Yahoo! Finance:Toyota Motor Corporation (TM)

こうやって見ると、トヨタは既に周回遅れ状態の様です。
トヨタの負債が多いのは掛金とかが多いからですかね。

パクリだ!という声もありますが、パクリでこれだけ行けるんだったら、日本ももっとパクった方がいいのではないのでしょうか?
逆に日本にはパクれるレベルの技術しかないのかと思うと、他者の非難より焦りの方が大きいです。

イメージダウンという話もありますが、消費者は忘れっぽいですからね。
アップルがソニータイマーを使っていた事も既に忘れ去られてますし、今回の賠償によるサムスンへのダメージは、ほとんどないでしょう。

トヨタとサムスンの差は、このレベルの訴訟では縮まる事はなさそうです。
あまり感情論だけで話を進めて現状を見ないと、改革すべき時に改革できなくなってしまう気がします。

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リアル海原雄山がいた!

世間を騒がすメニューの偽装問題ですが、調べていたら面白い記事がありました。
情報ソースはいつものWSJです。

都内のプリンスホテルで食事をしていた目の肥えた顧客の1人が、「ホテタ貝」と表記されていた食材が実際はイタヤ貝であることに気づいたことがきっかけ。
>>外食メニューの食品表示めぐり大きな物議―日本の食文化に傷も

グランドプリンスホテル新高輪:メニュー表示と異なった食材を使用していたことに関するお詫びとお知らせ

流石セレブの多そうな土地柄ですね。
イタヤ貝ホタテ貝を写真で比べても、私の様な素人にはさっぱりわかりません。

イタヤ貝とホタテ貝

青森ほたて本舗

左がホタテ貝、右がイタヤ貝だそうです。

イタヤ貝を、発育悪くて血色の好いホタテ貝と言われたら騙されてしまいそうです。
まして貝柱とかだけ料理に混ざって出てくるのですから、判断は容易ではないでしょう。
味のわかる人は、いる所にいるんですね。

海原雄山は漫画だけの存在と思っていましたが、事実は小説より奇なりと言った所でしょうか。

ところで、今回のメニューの偽装なのですが、この手の話は至る所に転がっています。
MBAで色々学んでよくわかったのですが、世のブランドはこれと同じ様な構造であると言う事です。
即ち、多くの人にとって、重要なのは看板であり中身ではないと言う事です。

化粧品は高い物も安い物も原価はほとんど同じですし、服などもそうです。
あるいは株とかもそうなのかもしれませんね。
同じような業績・企業体なのに、実態以上に評価されてたりその逆だったりする事は屡あります

どうもいつの間にか拝金主義に陥っている様な気がします。
ブランドにせよ料理にせよ、その価値を正しく理解できる人や理解しようとしている人にこそ活用してもらいたいものです。

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配当金は本当に必要なのか?④ - シグナリング効果 1

ここまで配当金と株価の関係を考えた場合にどのような事が考えられるのか見てきました。
ここで少し見方を変え、配当金が与える影響について心理的にどのような影響を与えるのか考えてみます。

理経済:配当金は本当に必要なのか?①
理経済:配当金は本当に必要なのか?② - DDMによるアプローチ
理経済:配当金は本当に必要なのか?③ - MM理論

配当金を支払う効果として、投資家や債権者の様な関係者(ステークホルダー)に対して、ある種の情報提供を行う効果(シグナリング)があります。
具体的には次の3つがあります。

  1. 情報の非対称性の軽減
  2. エージェンシー問題の緩和
  3. 破綻確率の低さをアピール

他にも色々有ります。
細かいものについてはこの辺りの論文をご参照ください。

Naceur, Goaied and Belanes:On the determinants and dynamics of dividend policy

情報の非対称性とは、例えば医者と患者の関係が挙げられます。
医者は医術の知識がありますが、患者は知識がありません。
病状も薬の処方も、患者側は医者のいいなりと言うわけです。
患者も医者に意見する事はないでしょう。

これは投資家と経営者の関係にも言えます。
経営者は会社の内部情報を知っている為、経営状態を隠して粉飾やインサイダーを行えますが、投資家は企業の情報が少ない為、見破るのは困難です。

投資家は経営者や監査法人が小出しにする情報を見ながら判断しなければいけません。
経営者は配当を出す事により、自分達の財務内容に自信がある事をアピールでき、投資家はその自信を実感できるというわけです。

エージェンシー問題とは、「行為主体Aが、自らの利益のための労務の実施を、他の行為主体Bに委任すること」です。
よくわかりませんね。

ざっくり言えば、要するに皆自分の為に働いていると言う事です。
経営者は会社や株主の為ではなく、自身の報酬の為に働いていますし、従業員も自身や自身の家族の為に働いています。
投資家も然りです。
だからこそ皆、会社がやばくなったりすると、平気で訴訟したり経営者を罵ったりするわけです。

これを緩和する為に、例えば経営者に株券を渡します。
これにより配当を支払えば自身の利益として還元される事になる為、利益に貢献する様に働くだろうというわけです。

長くなったので続く…
理経済:配当金は本当に必要なのか?⑤ - シグナリング効果2

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貿易収支がまた赤字

2013年10月の貿易収支(速報)が発表されました。
1兆907億円の赤字と、過去最大級の大赤字です。

輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆907億円の赤字だった。赤字は16カ月連続と最長を更新した。赤字額は単月として3番目の大きさで、10月としては2012年の5562億円を大幅に上回って最大だった。
>>貿易赤字1兆907億円=過去3番目の額、燃料輸入増―財務省

前民主党政権が解散をしてからおよそ1年経ちました。
円安になれば貿易が回復して景気が良くなると言われ続けてきましたが、一体いつになったらその片鱗が見えるのやら。

ここ1年、貿易収支はほぼ一貫して赤字をキープ。
グラフを見る限り、円安だろうが円高だろうが、貿易収支的にはあまり変わらないっぽいですね。
あまり為替に注視し過ぎるのは良くなさそうです。

貿易収支の推移2010.10~2013.10

財務省:過去の報道発表資料

また、単に為替の影響だけでなく、エネルギー輸入額の増大も影響しているのでしょう。
そうなると、輸出の振興だけでは稼ぐ手段が無くなりそうです。

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配当金は本当に必要なのか?③ - MM理論

配当金と株価の関係について、前回紹介したDDM以外にMM理論と言うものがあります。
MMとはModiglianiさんとMillerさんの頭文字を取ったものです。

理経済:配当金は本当に必要なのか?①
理経済:配当金は本当に必要なのか?② - DDMによるアプローチ

原文はこちら↓
本人たちの意向なのか、少し修正した論文を立て続けに出しています。

Franco Modigliani and Merton H. Miller:The Cost of Capital, Corporation Finance, and the Theory of Investment
Merton H. Miller and Franco Modigliani:Dividend Policy, Growth, and the Valuation of Shares

彼らの主張は、配当を払っても払わなくても投資家が受け取るトータルリターンは変わらないというもの。

株価と会社の純資産が紐づいているとすれば、

配当金を払う⇒純資産が減る⇒その分株価が下がる

となる為、結果的に投資家が持っている資産の総額は変わりません。

よって配当金は株価にはマイナスの効果があり、トータルリーンには効果がないというわけです。
要は「配当金なんて意味ない!」ということ。

本家の論文では企業価値とキャピタルゲインの観点から数式をガリガリ解いていくと、同じ数式で書ける事から、両者は同じものであると結論付けています。

しかし、この理論にはキツイ前提条件があります。
前提条件としては次の3つが書かれています。

  1. 完全市場である
  2. 投資家は合理的である
  3. 商品は同質である

完全市場とは税金もなく、情報は瞬時に共有され、流動性は常に存在するような理想な状況です。

しかしこの前提だと、世界中の国はタックスヘイブン状態であり、企業の情報は筒抜け状態のためインサイダー情報もなく、銀行は頼めば適正な金利ですぐさま貸し付けてくれるような環境と言う事になります。
およそ現実的ではありません。

投資家が合理的である場合、兎に角1円でも多くの利益を求める状況です。
所謂経済人と言う存在です。
儲けのためなら平気で他人を裏切るような社会です。

人間が非合理的であるか否かの実験として有名なのは、例えば次のような例があります。

あなたと友人は2人で散歩中に1,000円を拾いました。
あなたは友人と、この1,000円をいくらずつ分けますか?

まずネコババするなと言う意見もあるでしょうが、投資家が合理的なら捕まるリスクとネコババで得られるリターンを比較しより有利な方を採るでしょう。
多分ネコババします。

次に配分ですが、多くの場合は500円ずつとか、拾った方が600円と言う様に、配分に差がでないようにするでしょう。

しかし、あなたと友人が経済人なら、あなたに999円、友人に1円という配分を行うでしょう。
そしてお互い納得するはずです。
元々拾ったお金ですから、1円でも手に入るのなら文句がないというわけです。

合理的とは口で言うのは簡単ですが、貫こうとすると難しいですね。
こちらも現実的ではありません。

ちなみに、拾ったお金が1,000円ではなく100兆円とかだたら、多分インフレ率と得られる利益を比較しだす事でしょう。

最後に商品が同質というのは、株も債券もデリバティブも本質的に同じ商品であり、同じような動き、リスク、リターンがもたらされるという前提です。

しかし、株とデリバティブ、商品先物等を同列に扱うのも変だし、差がないなら世に溢れる様々なファンドは何なんだと言う事になります。
日本もアメリカもギリシャも同じに扱うというのも、ちょっと無理がある気がします。

この様にMM理論は理論的には優れているのですが、机上の空論の域を出ないわけです。
現実的に考えれば、配当金は思っているほどの影響力はないものの、それなりに影響がありそうです。

理経済:配当金は本当に必要なのか?④ - シグナリング効果 1
理経済:配当金は本当に必要なのか?⑤ - シグナリング効果2

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米国も量的緩和で悩む

アメリカも量的緩和の効果と止め時で悩んでいるようです。
緩和の担当者がWSJで告白してます。

「国民の皆さま、申し訳ありませんでした」。私に言えるのはそれだけだ。私は米連邦準備制度理事会(FRB)の担当者として、量的緩和(QE)として知られる初の債券購入プログラムを取り仕切った。QEはFRBにとって最重要課題で、メインストリート(実体経済)を支援するツールだと言い続けている。だが、私はそのプログラムの実態を認識するに至った。それは史上最大のウォール街の裏口救済策だったのだ。
>>【オピニオン】「申し訳ない」としか言えない―量的緩和の指揮官の懺悔

日本でも量的緩和でお札を刷りまくったのですが、効果はご存じの通り、あまりあったとは言えません。
少なくとも回復したとは言い難い状況です。
この為日本では更なる増刷を日銀に要求し続けたわけですが、日銀は安易に応じず緩和は遅々として進みませんでした。

そんな中、米国でもリーマンショックを切欠に量的緩和によるお札のばら撒きを繰り返したわけですが、やはり効果は今一。
しかも止めようかなと言った途端に新興国も巻き込んで株価が下がる始末。

量的緩和の担当者はウォール街を救っていながら、当の国民には全然お金が回らない事に悩んでいるようです。

おそらく米国も日本と同様、量的緩和を止めるに止められず、FRBは債券価格を押し上げ、財政の不健全化に寄与する事になるでしょう。
お札を刷れば景気が回復するなんてのは完全に妄想なのです。

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アメリカの新取引所 BATS - 伝統の取引所も敗北しうる米国

アメリカの取引所と言えば皆さんはどこを思い浮かべますか?
一番ポピュラーなのはニューヨーク証取でしょう。
他にもハイテク系のNASDAQや資源系が強いCME、渋い所だとETFに強いアメリカン証取辺りが出てくるのではないでしょうか?

さて、そんなアメリカの取引所なわけですが、現在証券取引所業界において、激震が走っている様です。
新興の取引所が追い上げており、しかも合併まで始めています。

新興取引所運営会社のBATSグローバル・マーケッツ(カンザス州レネクサ)は先月、より小規模のライバルであるダイレクト・エッジ・ホールディングス(ニュージャージー州ジャージーシティ)との合併を発表した。株式交換を通じた両社の合併条件は明らかにされていないが、合併後の株式取引量は米第2位の取引所運営会社ナスダックOMXグループを上回るとみられている。
>>地方からNY証取に挑む米電子取引所BATS、合併で事業拡大へ

米国の証券取引所シェア

BATSもダイレクト・エッジも、できて7年ほどなのに、単体でナスダックに匹敵するほどの売買高を誇っており、合併した場合は単純計算で28%超のシェアを獲得する事になります。
もう少しでニューヨーク証取も抜かされてしまう水準です。
まあ、ARCAもニューヨーク証取グループだと考えれば、まだ余裕もあると言えます。

BATSはシステム化や地方に居を構える事で、低価格戦略により企業を集めているようです。
次はARCAを買収し、独占的な地位を築く感じですかね。

それにしてもアメリカ企業の新陳代謝は凄いですね。
日本では東証が実質的に唯一無二の取引所となっており、他社の参入を許しません。

法律的には東証に集中させる必要はないのですが、実際にはコネやらブランドやらで参入できない状態です。
お金がないからできないのかもしれないですが、それだと外資が全然入ってこないのも不思議です。
アベノミクスで規制緩和するなら、こういった部分も緩和してほしいものです

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配当金は本当に必要なのか?② - DDMによるアプローチ

前回、機関投資家が配当金をあてにしていない事を書きました。
それにしても、なぜ配当金が必要という認識が世間に広まったのでしょうか

理経済:配当金は本当に必要なのか?①

細かい経緯はよくわかりませんが、大きかったのは1956年に発表された割引配当モデル(Dividend Discount Model , 以下DDM)でしょう。
原文はこちら↓

Myron J. Gordon and Eli Shapiro:Capital Equipment Analysis:The Required Rate of Profit

この論文の(1)式が、現代にまで脈々と受け継がれ、M&Aの際には必ず出てくる方程式です。

Ddm

P:株価、D:配当、k:割引率(論文内では利益率)、t:期間

発表された当時は名前はなかったみたいです。

さて、この式ももちろん重要なのですが、この論文で最も重要なのは株価を配当金で記述できると言う事です。
この式を信じると配当金をいっぱい払っている会社程、株価が高くなる計算になりますし、配当が0なら株価も0と言う事になります。
この為株主の資産を増加させる上で、配当金が重要になってくるわけですね。

実際、古いデータを見ると、アメリカの配当を支払っている企業(有配企業)も、上場企業全体の中で大きな割合を占めていました。
1963~67年で見た場合、米国では71.6%、日本では84.4%と高水準になっています。

アメリカと日本の有配・無配企業率

佐々木・花枝:わが国企業の配当行動のマクロ分析

ところが、貿易摩擦などによる利益率の低下や、MM理論(たぶん次回書きます)の台頭もあって、米国の有配企業の割合は急速に低下しています。
グラフ化すると一目瞭然です。

上場企業に占める有配企業の割合

野間:有配企業比率、日本以外は低下傾向続く

現在、欧米では配当金を払わないのが主流ですが株価は相変わらず形成されています。
そう考えると、影響がないとは言いませんが、配当金が株価を決定しているという考え方には相当無理があると言えます。

一方、日本ではなぜか有配企業率が高いまま。
この辺りはお国柄が出てるんですかね。
あるいは投資教育の充実具合か。

意味も分からずに欧米に追従し配当金が重要視し続けた結果、配当金が必要という神話の様な思想が根付いてしまった様です。
いかんですな~。

理経済:配当金は本当に必要なのか?③ - MM理論
理経済:配当金は本当に必要なのか?④ - シグナリング効果 1
理経済:配当金は本当に必要なのか?⑤ - シグナリング効果2

ちなみにこのDDMモデルを改良したOhlsonモデルと言うものも存在します。
こちらはクリーンサープラス関係を用いて、配当金ではなく将来の利益から株価を算出しようとした理論です。

尤も、現代ではデリバティブのお陰でクリーンサープラス関係自体怪しいものなので、
如何程の正確性があるのかは分かりかねますが。

詳しく知りたい方はこちら↓をご覧ください。

James A. Ohlson:Earnings, Book Values, and Dividends in Equity Valuation

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配当金は本当に必要なのか?①

終わった-!
大学院の最終試験が終了しました。
最後の試験、と言うかレポートは、最低3万字と物凄い分量となっており、面喰ってしまいましたが何とか提出。
当初小論と言われてましたが、これは小さくはないでしょう…。

体力的にも精神的にも回復してきたのででブログを再開しようかと思います。
随分間をあけてしまいましたが、まだ見ていただいている読者の方もいらっしゃるようで、本当に感謝感謝です。

さて、そんなわけで今日の本題に入ろうかと思います。
大学院で色々勉強する過程で、面白い理論やら論文やら見つけたので、備忘録も兼ねてちょっと掲載しようと思います。

なお、原文についてはネットで転がってることが多いので、気になる方は調べてみると面白いと思います。
検索はこちらが便利。

Google Scholar
日本語OKで、かなり便利。最初はこれで調べると良い。ただし余計な情報も多い。

IIJ
有料がメイン。1本$30~$100と高めだが、ノーベル経済学賞級の論文が読める

EBSCOhost
大学などで使われているオンライン論文データベース。中身は充実しているが、個人だとアクセスが難しい。

CiNii
データベースとしては今一で、日本語の論文しか検索できず、多くは期待できない。一方、料金は年間2,100円とリーズナブルで、本も検索できるので有難い。

今回紹介したい論文はこちら↓

日本企業のペイアウト政策と株式分割 -機関投資家へのサーベイ調査による実証分析-

ざっくり言うと、機関投資家に対して配当などの株主還元を重視するのかどうか、どういった還元方法を望んでいるのかをアンケート形式で調査したものです。
銀行が配当を好む傾向が見られることを除けば,総じて機関投資家は現金配当と自社株買いに対して差別しないとの事。

具体的な結果については色々示されていますが、注目したいのはこの表

Photo
表3 配当/キャピタルゲインの選好、配当/自社株買いの選好、総還元率の重要性

日本では、配当=株主還元という風潮が強く、配当を出さない会社は株主を馬鹿にしていると言う雰囲気があります。

Yahoo!知恵袋:キーエンスという会社は株主を馬鹿にしていますか? 自己資本比率9割以上、超優良...

しかし、プロの投資家に実際聞いてみると、銀行や生損保の様なお金の激しい所以外は、配当への興味が薄いようです。
配当でも自社株買いでもどっちでも良いというのが大勢みたいです。

会社の株主還元は重要であるかという質問に対しては、重要であるが重要でないを大幅に上回っているものの、どちらとも言えないもかなり高い値になっています
株主還元って重要視されている感がありますが、意外と無くても何とかなるのかも。

結局、年金や投信のように、本当に長く株を持つ人にとっては配当があるかは重要ではないと言うわけです。

個人の感覚とは随分ずれていますが、論文の後半に書かれているように、ファイナンスを体系的に学んでいるとそういう結論になるようです。
面白いですね~。

理経済:配当金は本当に必要なのか?② - DDMによるアプローチ
理経済:配当金は本当に必要なのか?③ - MM理論
理経済:配当金は本当に必要なのか?④ - シグナリング効果 1
理経済:配当金は本当に必要なのか?⑤ - シグナリング効果2

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