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邦銀が格下げ - なぜ格付けが重要なのか

日本国債の格付けが下がった事により、とばっちりを受けてメガバンク格下げを食らっています。
基本的に「日本の信用力」>「メガバンクの信用力」なので、上が下がると下も下がらざるを得ません。

欧州系格付け会社フィッチ・レーティングスは20日、三井住友フィナンシャルグループ(FG)やみずほフィナンシャルグループ(FG)など大手国内銀行グループの長期格付けを「シングルA」から「シングルAマイナス」に1段階引き下げたと発表した。
>>フィッチが大手邦銀を格下げ 「政府支援能力が低下」

ちなみに彼らのコメントはこんな↓感じ。
新聞では全文表示しませんが、興味のある方は無料なので(要登録)読んでみるといいでしょう。

仮にソブリン格付が今後において一段階引き下げられた場合においても、フィッチはサポート格付フロアーは「A-」(Aマイナス)にとどまるとみており、大手邦銀の長期IDRのアウトルックを「安定的」とした。これは、日本政府の大手邦銀に対する支援の意思が引き続き強固であるとみられることによる。また、ソブリン格付がより低位のカテゴリーに遷移するにつれ、システム上重要な銀行のサポート格付フロアーとソブリン格付のノッチ差は狭まる傾向にある。
>>大手邦銀グループの格付を「A-」に格下げ、アウトルックは「安定的」

要するに、邦銀が国家から自立し始めた、あるいはそれを迫られていると言う事。
結果、今後は自己の力で評価されるとの事です。
今日も今日とてドイツの格下げの噂が。

さて、こんな格付け変更ですが、さっそく色々なところで、「信用できない!」と言う声が聞こえてきます。
中には元S&P幹部も苦言を呈しています。

格付けは重要性失った-知り過ぎた元S&P幹部が指摘

先に断っておきますが、私は信用格付けを信じていません。
意見としては価値がありますが、都合が悪くなると一気に格下げを行う彼らを、どうして信用できましょうか。
妄信は危険です。

とはいえ、色々調べてみると、調べれば調べるほど格付けの呪縛が強い事に気づきます。
最も大きいのは運用規定です。

会社は退職金やら年金やらを、従業員に代わって運用しています。
そして従業員はそれがどのように運用されているか、あまり関心がありません。
聞いてもわからないし。

AIJ問題の時も運用担当者や運用を委託している従業員の理解の無さが、少なからず影響していると思います。
そもそも自社がAIJに出資していたか否かも知らない人が多いのではないでしょうか?
神奈川県印刷工業厚生年金基金とか大丈夫なのでしょうか

JC-NET:AIJ委託の年金基金 委託93業者一覧 業種別・所在県別分析3月7日版
厚生労働省:AIJ投資顧問に運用を委託していた厚生年金基金等について

話が逸れましたが、年金等の運用は結構繊細で、様々な規約・規定が設けられています。
担当者の腕で利回りが大きく変わるのは好ましくありません。
また、大損をして「払えません」では済まない事から、どういう銘柄には投資してはいけない、あるいはしなければいけないと言う規定が設けられています
ここに格付けが関わってきます。

例えば、こちら↓にはJAの「農林漁業団体職員退職給付金制度」の運用方針が書かれています。
実際の規約はもっと畏まったものでしょうが、内容は同じでしょう。
他にも色々な会社が格付けを運用方針に謳っています。

本会は資産運用にあたり、投資対象商品・発行体毎に保有限度を設けた分散投資 ・安定運用に努めており、投資対象は投資適格銘柄(BBB格以上)の有価証券(国内債が主体)等とし、仕組み債や株式等リスクの高い有価証券は保有しておりません。
>>安全・安心、確実をモットーに団体経営に貢献

社団法人税理士事務所職員退職年金共済会

皆さんの会社はどうですか?
私の前の会社には、これと同じような内容が、ばっちり書かれていました。
私が格付け会社を信じるか否かに関わらず、私の年金や退職金は格付けを目安にして運用されているのです

BBB格以上であれば、あまり格付けは関係ないのかもしれませんが、BBB(マイナス)を切れば、運用担当者は問答無用で売却するでしょう。
仕事ですから。

また、BBBに近付けば、将来の決済も考えて、部分的に売却を始めるでしょう。
日本の国債だって、例外ではないと思います。

格付けが本気で信用できないというのであれば、会社に掛け合って、この規約を削除させねばなりません。
規約の見直しとかですと、重役に諌言する必要がありますが、それだけの度胸となると…。

仮に変更するとした場合、「安全」の基準が不明瞭となるため、新たな基準設定が必要になりますし、運用担当者の力量や運用担当者を選定する力も問われます。
従業員や会員全員に関わる事ですから、彼らの意見も無視できません。
調整は大変です。

これらの手間暇が、結局格付機関への依存を招いているわけです。
世界の機関投資家と委託者である労働者の意識を変えない限り、彼らの重要性は揺るがないのです。

言うは易く行うは難しという様に、言行一致は大変です。
「中韓はクソだ!」と言いながら彼らとの貿易をしていたり、「原発はやめろ!料金は下げろ!」と言いつつ自動車などの電力を大量に使う物を買い換えてたり、「高福祉の国がいい!」と言いつつ選挙にはいかなかったり。
格付け機関の呪縛から抜けるのも、中々に覚悟と努力が必要なわけです。

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