日本の借金を考える① - 債権と債務
以前、日本の借金額について書き、コメントを頂いたのですが、色々あって放置状態でした。
やっと状況が改善したので、返答させていただきます。
コメントとしてはこんな感じ。
世界一の借金大国はアメリカで、世界一の債権大国は日本。ミスリードしないように。
確かに、米国の債務は14兆ドルに達しており、日本の借金とどちらが多いのかと、世界1,2位を争う水準に達しています。
これらは当然為替の影響を受けるため、放っておいても世界順位は上がったり下がったりします。
円高になれば、日本の借金残高は米ドルベースで増えます。
また、そもそも借金とはどこまでを指すのか、という定義によって金額が随分変わります。
例えば日本の借金は1000兆円と言われますが、これは大凡建設国債と特例国債(赤字国債)を足したものです。
赤字国債は法律で、発行を原則的に禁じられていますが、建設国債は、社会インフラ、例えば高速道路や新幹線など、将来利益が出るものに投資される為、発行が可能です。
そういう意味では、赤字国債と建設国債を足すというのは、ちょっとおかしいんですね。
しかし、そこに突っ込みを入れる人はあまりいません。
比率としては、大体1:2位ですので、純粋な借金という意味では、GDPの8割位、400兆円程となります。
このため、どこまでを「各国政府の債務残高」と考えるかは、意外と面倒です。
国際的な協定があるかどうかは知りませんが、おそらく、大まかには一致していても、細かい部分は各国の裁量に任せていると思います。
100兆円単位で変わるとは思いませんが、日米レベルなら数十兆円程度のブレはあっても不思議ではありません。
正確な意味で、日本の借金が世界一かどうかは、判断が難しい所です。
前回のブログでは、シティの文献を根拠としていますの、シティの目線では、日本は世界一の債務残高という事になります。
さて、借金の残高についてはこの位にして、借金(債務)と債権の関係に移ります。
まず重要な点としては、日本が世界一の債権大国か借金大国かを議論するのは、ほとんど意味がありません。
なぜならば、この二つの命題は同時に成り立ち得るものであり、むしろ普通であれば同時に成り立っても良いものだからです。
ではなぜ成り立つのか、と言う事を知るためには会計の知識が必要です。
ここでは、ざっくりと債務と債権の関係について説明します。
なお、イメージを持ち易くする為に、厳密な説明は省きます。
興味がある方は本屋に行ってください。
ざっくり言うと、債権とは貸し、債務は借りに相当します。
そのため、債務を借金と言う事が屡あります。
一般的な感覚からいえば、貸しと借りは相反するものですが、世の中には人から借りを作り、他の人に貸しを作る人がいます。
典型的な例は銀行です。
こちら↓は三菱UFJフィナンシャルグループの貸借対照表です。
本来はら銀行部門を使った方がいいのですが、資料と手間の関係からFGで代用。
SharesBlog:【日経一面企業分析】三菱UFJFG[8306]
これの図の左側、青枠で囲った部分が債権、つまり貸しになります。
一方で右側の赤枠で囲った部分が債務、ざっくり言うと借金になります。
こうやって見ると、三菱UFJは180兆円もの借金を行い、200兆円の債権を持っていることになります。
日本国内でここまで借金がある会社は、郵政位しかないでしょう。
三菱UFJFGは日本最大級の借金企業であり、債権企業でもあるわけです。
個人でも、家を借金して買う事がありますが、あれと同じ状態なわけです。
借金をして家を買う場合、不動産という債権を保有する代わりに、巨額の借金を負うわけです。
ここまでわかれば、「日本が世界一の債権大国か借金大国かを議論するのは、ほとんど意味がない」という事がわかります。
日本が作り上げた借金、つまり債務はどこに行ったのでしょうか?
銀行と同じで、何らかの債権となるわけです。
それは人であり、インフラであり、社会保障です。
借金が増えたからと言って、必ずしも形がなくなってしまうとは限りません。
それが海外に振り分けられれば、海外に対する債権として計上される事になります。
特に日本は介入などをしまくっており、アメリカを中心に、外国に対する債権が多数あります。
借金が多くなれば、殆どの場合、債権残高も増えてくるため、債権大国にも成り易いわけです。
よって、意味がないと言う命題が証明出来ました。
では、日本の借金問題を考える上で何が重要なのでしょうか。
続く…
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