イエロー・ケーキ ~クリーンなエネルギーという嘘~ を見てきた
先日、イエローケーキという映画を見てきました。
名前の通り、ウラン原料の生産についてのお話です。
ウランは製造が終わると、硫黄のような黄色い粉末になるため、このように言われています。
この映画は、まず過去の遺物から始まります。
旧東ドイツの国営企業だった、「ヴィスムート」が行っていたウラン採掘事業ですが、今ではウラン鉱山を閉鎖し、今度は埋める作業に勤しんでいます。
また、ウランは採掘の際に水と混ぜる必要があるため、イエローケーキを精製する過程で、汚染されたと思われる水が大量に出ます。
これを辺りにばら撒いているため、地盤が緩み、使い物にならない土地になっているようです。
この作品の序盤では、ウラン採掘が如何に秘密主義で行われてきたか、また普通知る事は無い、採掘の現場や事後処理について詳細に語っています。
なお、ヴィスムートは、旧ソ連の遺物でもあるので、中身がよくわからない謎企業ですが、調べると結構論文などもあるようです。
ドイツ・ヴィスムート社における鉱山跡措置 PDF
原子力研究バックエンド推進センター デコミッショニング技報第35号
中盤はナミビアのロッシング鉱山の従業員の話です。
採掘するか否かを決める含有量の調査が、放射線量的な意味で危険性が高いのが特徴です。
また、女性従業員が働いていることに突っ込みを入れている人もいます。
まあ、この辺りは石油や石炭も大して変わりません。
炭鉱で働いている女性も、かつての日本には大量にいましたし、男女平等とか言われているこの世の中ですから、女性がいても不思議ではありません。
興味深いのは、やはり前述した、採掘後の廃棄物です。
水分を含んだウラン鉱石の残骸は、近くの人工窪地に捨てられ、水分が蒸発するのを待ちます。
これが調整池のようになり、そこかしこにやばそうな池を量産しています。
後半はウラン鉱山保有者や、その町の人々の話です。
オーストラリアのアボリジニーが、土地を売り渡す羽目になった事や、カナダのウラニウム市の事を描いています。
前者は、日本でも見かける、ウラン開発の反対運動についてです。
興味深いのは後者です。
ウラニウム市は、その名の通り、ウラン鉱石の採掘で町を作ってきました。
ウランが採れていた間は、キャメコ(カメコ)やアレバからの資本が流入し、地域を支えていました。
短期労働のつもりで来た労働者も、いつの間にか所帯を持ち、そのまま地元の人として居座り、"故郷"となっていました。
2,3世代は居たようで、そこで生まれ育った人も多かった様です。
しかし、ウランの可採埋蔵量が少な目になってきたのに加え、近くで、さらに含有率の高い鉱脈が見つかり、町は見放されました。
ピーク時には5000人位の人口でしたが、今では89人だそうです。
残った人から見れば、何とも寂しい光景でしょうね。
では残った人が何をしているのかというと、若い人達(映画では女性でした)は、近くの茂みの石や土を掘り、サンプルとして地質学者に送っているとの事です。
曰く、「ここでもまだまだウランが採れるんです!是非来てください!」とのこと。
サンプルは飛行機に乗せられない程の高線量なのですが、「学者は鉛の瓶に入れてずっと研究室に飾っていますが、何ともありません。自分達は少ししか触れないし、大丈夫でしょう」と、全然気にしていないのが印象的でした。
また、中年や年寄りは、使用済みウラン燃料の再処理施設の誘致を願っているようです。
実際に行動しているかまでは描かれていませんでしたが、誘致の話が来てほしいと考えている事は、断言していたので間違いありません。
「みんな原子力を恐れるが、教科書に原子力は安全と載せるべきだ!」というのがおじい様方の主張のようです。
ちなみに彼の一家はキャメコで穴掘りや安全管理で生計を立てているそうです。
町全体がそんな感じだとか。
この作品を見ると、立場によって、ウランや放射能に対する意見の違うというのがよくわかります。
当然、映画の感想や評価も、人によって大きく異なります。
とても考えさせられる作品なので、お勧めです。
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