さて、シリーズ2回目です。
前回は高線量被爆について見てみました。
理経済:放射能を正しく怖がる① - 高線量被曝の場合
まずは前回予告した出典から。
出典はこちらの本です。
これは、米国で実際行われた、放射能の影響を調べるために行われた、"実験"を綴った物です。
米国では太平洋戦争の辺りから、放射性物質に対して異常な程の執着を見せていました。
日本で原爆を落とした後(正確には原爆のかなり前から)、放射能の影響を調べるために死体を捌きまくりました。
しかしそれでは不十分でした。
原爆では、その人がどれだけの放射線を吸収して、どのような身体的影響が出るのかはわかりません。
しかも多くの人が熱線や爆風で死亡した為、純粋に被爆により死んだ人のデータは不十分でした。
と言うわけで彼らが思いついたのは、「だったら生きてる人間に直接注射しちゃえば?」です。
直接注射ならどれだけの放射性物質が注射されたか、何を吸収したかがよくわかります。
監視も楽です。
正気の沙汰とは思えませんが、原爆が現実味を増した1945年中頃から、18人の被験者に、致死量レベルのプルトニウムを、"勝手に"注射しました。
それが後の世でジャーナリストにすっぱ抜かれ、ばれてしまった訳です。
アメリカの場合、軍の極秘資料も時間が経つと段階的に秘密レベルが下がり、その内墨塗りされて公文書館に保管されます。
しかし墨を塗るのは人間なので、よく見るとヒントがあります。
アイリーン・ウェルサム氏は政府資料からこの事実を発見し、実際に誰が実験されたのかを突き止めました。
この本を見ると、単に怖いとか、酷いとかだけではなく、放射能が実際にどのような影響を持つのかがわかります。
例えば、寿命は放射線量の多寡だけでなく、本人の意志力がかなり効いてくる事、寿命は縮まる人とそうでない人で大きく分かれる事、意外に癌にはならず、むしろ心不全が多い事等がわかります。
例えば、被験者のイーダ・シュルツ・チャールトン(48歳)は、210mSv/年の放射能を受けながら、37年間生きました。
アルバート・スティーヴンズ(58歳)は2,230mSv/年のプルトニウムを注射され、21年生きました。
一方、ポール・ガリンジャー(56歳)は220mSv/年のプルトニウムを注射され、5ヶ月で死亡しました。
シオン・ショー(5歳)は120mSv/年のプルトニウムを注射され、8ヶ月で死亡しました。
他にも、プルトニウムが溜まり易いのは骨で、ついで肝臓、血液なのがわかります。
特に骨には停滞しやすく、火葬すると骨が粉状になります。
はだしのゲンで「母親を火葬した際に骨が残らなかった」というエピソードがありましたが、実話なんですね。
しかも遺骨自体が放射性物質のため、余計に憤ります。
このような事実が暴露され、アメリカではすったもんだしました。
さらに、後に続こうとするジャーナリストの手により、この事実も氷山の一角であることが発覚。
実験された人数は数千人規模以上と言う事がわかってきました。
人体実験のうち、テネシー州バンダービルト大では42年から49年にかけ放射性同位元素の鉄59を健康な妊婦819人に投与、胎児への吸収状態を調べた。追跡した子供634人のうち3人ががんになっていた。
>>放射能 1200人に人体実験 米政府が情報公開
追記:
上記のリンクが切れてるようです。
似たような記事が他にもあるようです。
興味のある方は新聞の縮刷版を見ておくことをお勧めします。
>>米の放射能人体実験 次々崩れた機密の壁 地方紙記者が追跡6年
彼是10年以上前の記事なので、原文が見当たりませんが、結構知っている人がいる、公然の秘密です。
とんでもない事をしていたわけです。
追記:上記ブログに書かれている新聞の紙面を確認したところ、殆どすべて記事が確認できました。
しかし、被験者の方には悪いですが、得られた実験結果はかなり貴重です。
皮肉にも、かつての被験者であり、放射能にうるさいはずの日本人が、今一番このデータを欲しがっています。
例えば、妊婦が放射性物質を取り込んでしまった場合、人工的に注入するのに匹敵するほどであっても、奇形ができる確率は殆どゼロです。
癌になるとも言われますが、確率が劇的に上がると言う訳でもない事がわかります。
昨今、専門家が低線量でどうなるかもめていますし、日々聞いたことも無い単位が飛び交っています。
聞いている一般人には、それがどれ程のものなのか、ピンときません。
だから余計に不安になります。
この事実を知っていれば、随分違うと思うのですが。
残念ながらこの事実は、米政府にとってはあまり表立って騒がれたくないらしく、こういう事態になっても、データが表に出ません。
日本政府も借りてくればいいですし、メディアも今こそこのデータを見直せばいいのですが、圧力でもかけられているのか全然話しません。
15年前は載せたのに…
ともあれ、放射能の影響は、今メディアや掲示板で騒がれているほど強烈なものではなさそうです。
「放射線量100ミリシーベルト以下なら、癌になる確率は1.05倍」と言うのは、強ち嘘ではなさそうです。
ちょっとだけ続く…
理経済:放射能を正しく怖がる③ - 冷静な目で見る
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