交付金と公共投資② - 富岡町の産業構造
シリーズ2回目です。
前回、なぜ無駄な公共投資が止まらないのかを見てきました。
理経済:交付金と公共投資① - なぜ無駄遣いが止まらないのか
「こんな施設要らない!税金の無駄遣いだ!!」
よく聞く言葉ですが、経済学的に言えば、出来上がった施設の有用性はそもそも考えていません。
重要なのは作ることであり、出来上がったものではないと言うことを見てきました。
こうすることで大きな雇用を維持し、全体の所得を、政府が無駄遣いした以上に押し上げます。
彼らが作っているのは好景気であり、箱物はただの副産物なのです。
さて、理論はわかったのですが、実際のところはどうなのでしょうか。
原発マネーで潤っていたと思われる、富岡町の事例を見てみましょう。
富岡町には多額の原発マネーが入っており、かなりの部分を公共投資に向けていたようです。
結果として町の雇用構造は、建築業に大きく依存する事となりました。
こちら↓は富岡町の建築従業者数の比較です。
全国では人口の3%程度が建築業に携わっていますが、富岡町は12%%と、かなり多いです。
こちら↓は、業種別の労働者の比率です。
上のデータと違い、労働者内での比率を表わしています。
統計センター:平成21年経済センサス-基礎調査 07 福島県 14表 より作成
建築業は、なんと全体の22%にものぼります。
全国平均は6.9%ですから、やはりどう考えても多いです。
出来上がった箱物は住民が望んでいなかったとしても、箱物建設により仕事が増えることを望んでいた人は、労働者の2割にものぼります。
一方、漁業や農業など、"富岡町の自然"から収入を得ていた人は殆どいません。
「故郷の美しい自然を返せ!」と言っている方が多いようですが、このデータを見ると少し捉え方が変わります。
また、次点に来るのが小売業、3位が飲食等、人口がいないとやっていけない商売が続いています。
無駄な公共事業で収入を得た建設業の人達が、飲食や小売を牽引しているのでしょう。
何せ彼らは労働者の2割なのですから、お得意様です。
仮に13億円の公共投資が行われ、所得の2割を貯蓄、残りを消費に回していたとすると、乗数効果により65億円の所得増加効果があります。
町民の平均年収が全国平均の450万円とすると、交付金だけで所得が21%増加します。
他にも原発からの町民税とかも落ちているでしょうから、実際はもっと大きな額になるでしょう。
原発が爆発してもしなくても、彼らは貧困により自主的に退去していたでしょう。
建築業が無ければ、失業率は跳ね上がっていました。
平均値まで戻るとすると、失業率が14、5%ポイント上がる事になります。
今の失業率もあわせて、計20%近くになるわけですから、若い人はとても住めません。
このように、原発マネーによる無駄な箱物作りは、地域経済の発展に貢献してきました。
ただ、町議がアホなのか、町民の見る目が無かったのか、発展の方向性を間違えたために、今になって苦労する羽目になったわけです。
豪遊と言うと、煌びやかなシャンデリアの下で、長い名前の料理を食べているようなイメージかもしれませんが、必ずしもそうとばかりは限りません。
故郷を離れなくてすむのも、立派な豪遊ではないでしょうか。
残念ながら、原発が完全撤退すれば、町や町民の財政はすぐに逼迫するでしょう。
まあそれも良いのではないでしょうか。
彼らの選んだ道ですし。
いわき市との市町村合併で生き残れるかもしれませんし、カリスマ的な町長が現れるかもしれません。
結果に彼らが責任を持ってくれれば、それで良いのです。
もうちょっとだけ続く…
次回は具体的な恩恵と、役場のぼやきについてです。
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