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放射能を正しく怖がる② - プルトニウム人体実験

さて、シリーズ2回目です。
前回は高線量被爆について見てみました。

理経済:放射能を正しく怖がる① - 高線量被曝の場合

まずは前回予告した出典から。
出典はこちらの本です。

マンハッタン計画―プルトニウム人体実験
マンハッタン計画―プルトニウム人体実験 アルバカーキー トリビューン

小学館 1994-11
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これは、米国で実際行われた、放射能の影響を調べるために行われた、"実験"を綴った物です。

米国では太平洋戦争の辺りから、放射性物質に対して異常な程の執着を見せていました。
日本で原爆を落とした後(正確には原爆のかなり前から)、放射能の影響を調べるために死体を捌きまくりました。

しかしそれでは不十分でした。
原爆では、その人がどれだけの放射線を吸収して、どのような身体的影響が出るのかはわかりません。
しかも多くの人が熱線や爆風で死亡した為、純粋に被爆により死んだ人のデータは不十分でした

と言うわけで彼らが思いついたのは、「だったら生きてる人間に直接注射しちゃえば?」です。
直接注射ならどれだけの放射性物質が注射されたか、何を吸収したかがよくわかります。
監視も楽です。

正気の沙汰とは思えませんが、原爆が現実味を増した1945年中頃から、18人の被験者に、致死量レベルのプルトニウムを、"勝手に"注射しました
それが後の世でジャーナリストにすっぱ抜かれ、ばれてしまった訳です。

アメリカの場合、軍の極秘資料も時間が経つと段階的に秘密レベルが下がり、その内墨塗りされて公文書館に保管されます。
しかし墨を塗るのは人間なので、よく見るとヒントがあります。
アイリーン・ウェルサム氏は政府資料からこの事実を発見し、実際に誰が実験されたのかを突き止めました。

この本を見ると、単に怖いとか、酷いとかだけではなく、放射能が実際にどのような影響を持つのかがわかります。

例えば、寿命は放射線量の多寡だけでなく、本人の意志力がかなり効いてくる事、寿命は縮まる人とそうでない人で大きく分かれる事、意外に癌にはならず、むしろ心不全が多い事等がわかります。

例えば、被験者のイーダ・シュルツ・チャールトン(48歳)は、210mSv/年の放射能を受けながら、37年間生きました。
アルバート・スティーヴンズ(58歳)は2,230mSv/年のプルトニウムを注射され、21年生きました。

一方、ポール・ガリンジャー(56歳)は220mSv/年のプルトニウムを注射され、5ヶ月で死亡しました。
シオン・ショー(5歳)は120mSv/年のプルトニウムを注射され、8ヶ月で死亡しました。

他にも、プルトニウムが溜まり易いのは骨で、ついで肝臓、血液なのがわかります。
特に骨には停滞しやすく、火葬すると骨が粉状になります。
はだしのゲンで「母親を火葬した際に骨が残らなかった」というエピソードがありましたが、実話なんですね。
しかも遺骨自体が放射性物質のため、余計に憤ります。

このような事実が暴露され、アメリカではすったもんだしました。
さらに、後に続こうとするジャーナリストの手により、この事実も氷山の一角であることが発覚。
実験された人数は数千人規模以上と言う事がわかってきました。

人体実験のうち、テネシー州バンダービルト大では42年から49年にかけ放射性同位元素の鉄59を健康な妊婦819人に投与、胎児への吸収状態を調べた。追跡した子供634人のうち3人ががんになっていた。
>>放射能 1200人に人体実験 米政府が情報公開

追記:
上記のリンクが切れてるようです。
似たような記事が他にもあるようです。
興味のある方は新聞の縮刷版を見ておくことをお勧めします。
>>米の放射能人体実験 次々崩れた機密の壁 地方紙記者が追跡6年

彼是10年以上前の記事なので、原文が見当たりませんが、結構知っている人がいる、公然の秘密です。
とんでもない事をしていたわけです。
追記:上記ブログに書かれている新聞の紙面を確認したところ、殆どすべて記事が確認できました。

しかし、被験者の方には悪いですが、得られた実験結果はかなり貴重です。
皮肉にも、かつての被験者であり、放射能にうるさいはずの日本人が、今一番このデータを欲しがっています

例えば、妊婦が放射性物質を取り込んでしまった場合、人工的に注入するのに匹敵するほどであっても、奇形ができる確率は殆どゼロです。
癌になるとも言われますが、確率が劇的に上がると言う訳でもない事がわかります。

昨今、専門家が低線量でどうなるかもめていますし、日々聞いたことも無い単位が飛び交っています。
聞いている一般人には、それがどれ程のものなのか、ピンときません。
だから余計に不安になります。
この事実を知っていれば、随分違うと思うのですが。

残念ながらこの事実は、米政府にとってはあまり表立って騒がれたくないらしく、こういう事態になっても、データが表に出ません。
日本政府も借りてくればいいですし、メディアも今こそこのデータを見直せばいいのですが、圧力でもかけられているのか全然話しません。
15年前は載せたのに…

ともあれ、放射能の影響は、今メディアや掲示板で騒がれているほど強烈なものではなさそうです。
放射線量100ミリシーベルト以下なら、癌になる確率は1.05倍」と言うのは、強ち嘘ではなさそうです。

ちょっとだけ続く…

理経済:放射能を正しく怖がる③ - 冷静な目で見る

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コメント

 ちょっ。癌だけの事を見て影響が強烈じゃないって・・・
5歳の子は注射されて8ヶ月で死んでるって書いてるじゃないの。影響が大分少ないと言われてる60歳近くの人ももっと早く死んでるし(この場合寿命かもですが)。言ってる事が滅茶苦茶。

投稿: | 2012年8月 6日 (月) 02時16分

1コメさん
コメントありがとうございます。

出典を見ていただくとわかるのですが、
選ばれた18人は、余命10年はないと医者に言われた人達です。

特にこのシメオン君は、すでに骨肉腫を患っていました。
元々寿命は長く無かったのは、当時の証言から確認されています。
※幼い姉が誤ってハンモックから落とした事が原因だとか。

被爆の問題は確率の問題でもあるので、
少ない症例だけを見てあれこれ言うのは、
むしろ危険です。

下方の新聞記事はそのリスクを減らすために転記しましたので、
是非リンク元の全文もお読みください。

ちなみに彼はオーストラリア人なのですが、
「奇跡に賭けて渡米しないか?」と言われてアメリカに行ったそうです。
この事実が発覚した後の家族の怒りは相当だったとの事です。

低線量での被爆についてはかなり色々言われており、
専門家の意見も割れております。
例えば長崎大では寿命が延びると発表し、
広島大では無関係、環境保護団体は大幅に縮むとしています。

前提条件と調査件数をちゃんと調べてからでないと、
この問題は実像を見失ってしまうでしょう。

投稿: なる | 2012年8月 6日 (月) 23時54分

 返信ありがとうございます。

 いやいや。
 別に私は放射能・被曝アレルギーでも
何でもありませんよ。
 ただ結論見てあまりに・・・

 低線量の被曝によってランダムに遺伝子が傷つけられ
遺伝情報が傷つけられる事によって
間接的に癌だけではない色々な障害が出てくるんですよね?
 急性の物もあればそうでない物も
急性の物でも場所によっては命に関わりない場合も
あるのでしょう。
 だとしたら逆に癌や死亡者数だけの少ない症例だけ
取り上げて結論をだすのは全く意味ないし、
ごく普通に考えておかしいんじゃないのかと。
 そんな部分的にしか見れない人が
安全っぽい発言する事の方がよっぽど危険なんじゃないの?
と私は言いたかっただけです。

 
>>幼い姉が誤ってハンモックから落とした事が原因
 今は被曝実験の話では?
 あえて関係ない事故死した人を例に載せる意図は?
 
 リンクは切れてるのかも?

 ※失礼な発言なので表に出さなくて結構です。

投稿: | 2012年8月19日 (日) 16時33分

うあ。いきなり↑出てしまった。
すみません。

投稿: | 2012年8月19日 (日) 16時36分

>他にも、プルトニウムが溜まり易いのは骨で、ついで肝臓、血液なのがわかります。
>特に骨には停滞しやすく、火葬すると骨が粉状になります。
>はだしのゲンで「母親を火葬した際に骨が残らなかった」というエピソードがありましたが、実話なんですね。

 はだしのゲンの舞台は広島で、広島原爆はウラン原爆ですから、プルトニウムは含まれません。ゲンの母は栄養失調の中で、何とか末の女の子を産み落としたため、極端なカルシウム不足だったと考えます。
 はだしのゲンは中沢啓治の自叙伝といってもいいほどですから、母親の骨が残らなかったエピソードそのものは実話でしょう。ですがそれにプルトニウムは関係ないと思われます。
 
 失礼しました

投稿: ちょっと疑問です | 2012年8月30日 (木) 17時43分

1コメさん
コメントありがとうございます。

今のところ、様々な死亡事例を見る限り、
癌に類する病か、心不全位しか確認されていないようです。

上記の実験も、死亡要因も含めた、放射性物質の影響を見ています。
そもそも、親から受け継いだ遺伝情報の欠陥ならともかく、
放射線でピンポイントに狂った情報が、それほど多種多様な病気を引き起こすとは、
ちょっと考えにくいと思います。

動物実験でも、あまりそういった論文は見た事がないです。
知らないだけかもしれませんが。

>ハンモック
このシメオン君は、プルトニウムを投与される前から、
骨肉腫という骨のがんを患っていました。
彼は癌で死亡したわけですが、
その原因が何なのかわからないと言う意味で掲載しました。

癌で死亡、放射能を投与された⇒放射線のせいと、
早とちりしないように書いています。

投稿: なる | 2012年9月10日 (月) 23時10分

ちょっと疑問ですさん
コメントありがとうございます。

仰る通り、カルシウム不足の可能性も高いですね。
ちょっとデータがないので何とも言えませんが、
どちらが主因かはよくわかりません。
ただ、彼らの食生活を見る限り、
確かに各種栄養の失調が一番の要因かもしれません。

なお、ウラン型原爆でも、その構造上プルトニウムは発生します。
この辺↓に良く書かれています。

http://www1.kepco.co.jp/plu/11.html

また、放射性物質は必ずしも特別な物質ではないため、
ウランならウランの、セシウムならセシウムの、
他の同位体と同じような性質を持ち続けます。

稲がカリウムに間違えてセシウムを吸収というのは、ニュースで有名になりました。
構造が似てると、通常のセシウムと同じ特性を持ち、
時に他の物質にすり替わります。

ウランもプルトニウムも共にアクチノイド系列なので、
吸収経路も似ているのかもしれません。
実験データがないのでわかりませんが…。

投稿: なる | 2012年9月10日 (月) 23時25分

甘い話は無いと言う教訓です。そして捕食者から目を付けられる生きかたを控えるという最も重要な教えです。

投稿: 匿 | 2015年1月31日 (土) 13時42分

匿さん
コメントありがとうございます。

世の中、活かされない教訓も結構あると思います。
このネタもその一つ。
結構重要な内容なはずなのですが、
なぜか殆ど報道されずじまい。

具体的事例をきっちり出して教訓としていれば、
もう少しマシな状況になったのではないでしょうか。

投稿: なる | 2015年3月 4日 (水) 23時28分

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