東京電力は発行済み株式数が多い為、逆日歩が殆ど発生しません。
原発問題が浮上してから売買高も大きくなり、規制も殆ど入らないのでデイトレーダーにとっては、またとないチャンスです。
その為か、東京電力の掲示板は連日盛況で、連日投稿数が1位になっています。
本気か煽りか、皆適当なことを書いています。
Yahoo!掲示板:9501 (東京電力)
よく話題になるのは株主責任について。
これだけ大事になったんだから、東京電力の原発から利益を得ていた既存の株主は、それ相応の報いを受けるべきだと言うことです。
この議論は至る所で出ています。
まあ、掲示板で書いている人の大半は会社や国家のことを考えている訳ではなく、自分が空売りしているから減資して欲しいだけなのでしょうが。
このゴタゴタで随分荒稼ぎしたみたいですからね。
東京のデイトレーダー、Daisuke Iketaniさん(30)は3月11日の震災直後からの同株の変動で利益を上げた。具体的には2100円から300円を下回る水準にまで下落して、時価総額が80%も失われる中で、相次ぐ空売りで200万円を手にした。
先週末4月28日には同株は425円に前日比3.2%上昇した。一般投資家のYuuki Hakamataさんはこの大幅な価格変動と活発な取引を指摘して、「デイトレーダーなら、こうした銘柄に投資する魅力は大きい」と述べた。
>>東電は大きすぎてつぶせないとみて一部投資家が買い
こういう状況になると、必ず株主責任とか言われるのですが、ご存知の通り東京電力の株価は既に激減しており、いまさら減資と言われ様が希薄化と言われようが、関係なさそうなんですがね。
それに減資した所でメリットが良くわかりません。
ただの腹癒せにしか見えませんな。
つくづく思うのですが、株主の責任を追求したいのなら株価が高い時期にやらないと意味が無いと思うんですよね。
例えば、株価が高い段階でMSCBを発行するとか。
地震があって福島原発がごたついていたのは官邸にはわかっていました。
マーケット関係者だって、東電が売り込まれるのはわかっていました。
だったらその段階で東京電力に、受け手に滅茶苦茶有利なMSCBを発行させ、それを政府機関に持たせれば良かったわけです。
お金持ち自由人への道!:【MSCB】・・・悪魔の錬金術
MSCBは、いわゆる転換社債の一種で、借金の一部を放棄することで、相当分の株式に変換できる社債です。
債券+オプション型の社債で、ライブドアが使った事で有名になりました。
通常、オプションを発行すると既存の株主が損をするため、株価は下がります。
一方会社側は極めて低い金利で社債を発行できる上に、株価が転換価格を上回れば、借金を合法的に踏み倒せます。
とばっちりを受けるのは株主だけです。
昔、タタ・モーターを持ってた時に、彼らに多額の転換社債を発行され、えらい目にあいました。
まあ、いいんですけど。
MSCBは転換社債をさらにパワーアップさせたもので、何かにつけて転換価格を下げられます。
必ず儲かるとはよく言われたものです。
当然、既存株主の顔はおっかなくなります。
さて、今回の東京電力についても、地震の直後に3兆円位のMSCBを無理矢理発行させ、政府が引き受けます。
金利は0%にし、証券取引所には数日間売買停止や特別気配(多分必要ありませんが)を要請します。
ついでに、不要な転換権の行使はしないと、公言しておきます。
株価はガッツリ下がりますが、MSCBは社債なので資金調達の面でも返済についても関係ありません。
貸したお金を使ったのなら転換権を行使して、政府が株式を持ちます。
これにより、既存の株主は実質減資と言うことになり、責任を取ります。
逆に、お金を使わなければ、そっくり返してもらいます。
これにより転換権は部分的に消滅しますので、既存株主の責任は軽くなり、株価は上昇し含み損が減少します。
長く持つ人には有利になります。
要するにお金を資本市場から吸い上げられるわけです。
今回はマゴマゴしていた為、減った3兆円分の時価総額相当分が、デイトレーダやら何やらに散ってしまいました。
彼是考えても、結局当たり障りの無い優先株で決着したわけですし、中身の無い議論は時間の無駄ですな。
延期までしちゃうし。
日経NET:東電賠償支援の枠組み、決定先送り 民主の調整遅れ
理経済:東京電力を買いたい - 国有化は絶対無い
個人は逃げやすいのでいいのですが、年金や政府機関は必要以上に痛手をこうむったわけです。
普通に考えれば、政策議論がどうとか言われそうですが、浜岡原発が止められてMSCBを引き出せないなんてありえません。
すぐさま必要な事をやらず、取り合えず後回しでいいような事やるから場当たり的に見え、リーダーシップが分かり難いんですよね。
問題には長期的な問題と短期的な問題がありますが、どちらも解決できそうに無いからリーダシップが無く見える。
本当に株主責任を問いたいのなら、株式や市場についてよく理解し、迅速に動くべきだったと言うわけです。
後知恵とか言われそうですが、似たような事は過去に何度もあったんですがね。
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