行列オプションを考える③ - 行列が行列を作る
シリーズ最終回です。
今回は理論価格からその動向を考えます。
結論から言いますと、予想とはかなり違いましたが、興味深い結果が出ました。
理経済:"行列"オプションを考える① - コミケに行ってきました
理経済:行列オプションを考える② - 経験則からの予想価格推移
まず前提条件として、前回紹介したブラックショールズモデルを基準に、理論価格を考えます。
本来はもっとデータを集めてモデル化せねばならないのですが、如何せんデータがないため代用させていただきます。
また、前回は横軸に日数(時間)、縦軸に価格を取っていますが、行列オプションでは横軸に人数をとる必要が有ります。
という訳で、時間→人数と考え直します。
通常のオプションでは満期までの余裕期間の増減によって価格が変わります。
行列では売り切れまでの余裕人数の増減で価格が変わるはずですから、考え直しも可能であると思います(この辺はもっと詳細に調べないとなりませんね)。
なお、本来最後尾は時間で前後するはずですが、話がややこしくなる為一定と考えています。
また、早く買えれば時間が浮くというのも、取りあえず置いておきます。
そして行列オプションの価格は↓の図のL(人数)だと考えます。
上の価格から下側の価格を差し引いているのは、最も在庫が少ないと考える人の価格がゼロ基準とするためです。
本来は列の価値が有るのでしょうが、株のようにその価値を記す方法がないため、結果として無視されるのだと思います。
例えば在庫が50個と予想する人が、最も在庫が少ないと考える人だとすると、この人にとっては1番目に並んでいてもでも50番目に並んでも変わりありません。
なのに1番目が50番目よりも遥かに高い値をつける事になります。
これを平準化するために引いています。
するとこんな感じのグラフになります↓。
予想と随分違いますが、中々面白い結果です。
これを見ると、ある列にどのように人が並ぶかが分かります。
まずある商品に人がゆるゆると並んでいきます。
最初は列が短い為多くの人が、「まず売り切れることはないだろう」と考えている為、前に並んでいる人を羨ましい(=価値がある)とは思いません。
しかし、徐々に列が長くなってくると、在庫を少なめに見積もった人たちが焦りだし、我先にと急ぎだします。
こうなると「自分の前で売切れてしまうかもしれない」と思うようになり、数人前の人が羨ましくてたまりません。
釣り逃がした魚は大きい、買わずに後悔するより買って後悔しろと言うように、少し前の人で売り切れたときのショックはかなりのものです。
私も今回そういう目にあったのでよく分かります。
結局50%もプレミアをつけて買うことになりました。
よく行列が行列を呼ぶと言いますが、これは理論的にも正しく、単なる心理効果ではないようです。
サクラや行列商法は理にかなっているんですね。
しかし、こういった人達が並び終えてしまうと、今度は「こんな行列に並んでも買える訳がない!」と思う人が少しずつ出現し始め、順番への需要が下がり始めます。
そして並んだ人数より在庫が多いと、グッズの供給過剰となり、順番は価値を失います。
だって並ばなくたって買えるのですから。
一方、並んでいる人がいる(=実際より在庫を多めに見積もっている)のに売切れてしまうと、供給が追いついていないことになり、買えなかった人がその時のL(人数=売り切れ人数)分グッズに付加価値が付きます。
逆に言えば、価格×人数分だけ売り手は損しているんですね。
行列の価格を考えてみると、このような結果になりました。
予想は外れましたが、中々面白い結果だと思います。
このまだまだ研磨が足らないため、穴が多い理論です。
例えば、なぜ上側と下側を引き算するのかの根拠が弱いですし、なぜ、行列オプションが初めから価値を持っているのか、在庫が無限大だと発散してしまうのはどう解釈するのか、限定数が最初から公開され、整理券のように今の在庫数が分かるような場合どうなるのかなどなど、考えれば考えるほど出てきます。
学生や研究者なら「論文にご協力ください」で通ったのですが、会社員だとそうは行きませんね。
ちょっと残念。
これなら卒論弾かれて留年することもなかったし、イグノーベル賞も狙えたかもしれませんねww。
まあ無理か。
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