縦と横② - コモディティ化
新聞社の復活シナリオシリーズ2回目です。
今回は恒例の昔話。
さて、新聞産業が不況に喘いでおり、収益がやばくネット新聞の有料化に傾倒しようとしていますが、本当に新聞産業は不況なのでしょうか?
まず新聞産業で区切ってしまうと、木を見て森を見ずなので、広告業界全体の推移を見てみます。
少し古いデータなのですが、世界の広告費市場についてこんなデータが有りました。
eMarketer.com:Online Ad Spending to Outpace Overall Ad Market Growth
これによると確定している06年の段階で40兆円の市場規模を持っていることになります。
しかも全体的には上昇傾向です。
これはかなり巨大な規模であり、新聞社が嘆くほど小さな世界ではありません。
例えば、自動車の08年世界販売台数が6800万台ですから、市場規模だと8,90兆円程度でしょう。
数年後には広告産業に抜かれるかもしれません。
また、世界の化粧品の市場規模は凡そ3兆円だそうですから、如何に巨大であるかが伺えます。
ではそれなのに何故儲からないのでしょうか?
これはコモディティ化(一般商品化)が原因です。
どんな優れた技術やアイデアも、時と共に廃れていきます。
例えばノートパソコン。
昔は1台50万円位しましたが、今では当時より遥かに性能がいいものを、5万円程で買えます。
また携帯電話も昔は10万円位しましたが、今では0円の物まで有ります。
優秀な技術は大きな便益を人間に提供します。
その為色々な人が欲しいと思うわけですが、そういったものは作れる会社が少なかったり、今までの研究開発費の回収の為に特許料等を高くするため、商品の値段も高くなります。
しかし、それでも金持ちを中心に買ってくれる為、結構利益が出ます。
始めのうちは最初に開発した会社や、その傍にいる2,3社のみがこの利益を独占することになるため、うはうは状態になります。
しかし、その状態がしばしば続くと、他の会社もその恩恵に肖ろうとします。
アイデアを拝借し、それに何かしらを足して自分たちものし上がろうとします。
この為、市場規模(現在又は将来)が大きいのに商売している会社が少ない場合、新規参入が大量に増えて競争が起こります。
特に高付加価値商品は馬鹿高いものが多いので、値下げ競争が起こります。
これは自分達の首を絞めるような形ではなく、海外での製造や技術開発によるものが多いです。
1台50万円のノートPCが25万円になり12万円になり5万円になったのはこの為です。
このように、ある商品が、当初よりも大幅に値段が下がり、一般大衆が簡単に入手し廃棄できるようになる事をコモディティ化と言います。
実際には色々経済学的定義が有るのですが、現象としてはこの様な事が起こります。
正確な定義はこちらを御覧ください。
産業で言えば例えば半導体が有ります。
昔は半導体と言えば日本のお家芸であり、東芝など半導体産業は大きく売上を伸ばしました。
あまりに大きすぎた為、80年代には日米貿易摩擦の原因の一つでした。
しかし現在では台湾や韓国、そしてアメリカに追い立てられ、「エルピーダに資金入れないと潰れる」だとか、「東芝は半導体部門を売らないのか」だとか、見る影もありません。
最新技術でも米国に遅れをとっているようです。
外国株ひろば:日本のモノ創りは朽ちつつある リソグラフィーの世界での日本勢敗退は「スプートニク・ショック」くらい重要なことだ
このように、どんな産業でもコモディティ化はするものです。
航空業界やテレビ業界などのように参入障壁が高い所も有りますが、往々にしてみなコモディティ化し、価格競争の波がやってくるものです。
私は現在の新聞業界が置かれている状況は、これと同じだと思います。
有料化するしないで、「正直者が馬鹿を見る」とか色々言われていますが、これは特別なことではなく今まで人類の歴史の中で度々経験したものなのです。
ではどうすればいいのでしょうか?
正解は分かりません。
しかし先人を学ぶことでヒントは得られます。
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