何故銀行を救うのか?④ - 銀行なんて放っておけ
前回まで現代の信用創造の成り立ちを見てきました。
今回は本題の「銀行を救う必要はない」についてです。
信用創造とは"お金を作る人"の信用を担保として回っていますから、実は銀行がやらなくてもいいのです。
理経済:何故銀行を救うのか?① - 信用創造の仕組み
理経済:何故銀行を救うのか?② - 昔のお金製造法
理経済:何故銀行を救うのか?③ - "信用"の源泉
そもそも、現代版信用創造は実はかなり昔から擬似的に行われていました。
第2回で金貨の不便さについて振れましたが、重くて価値のあるものは、運ぶのに不便でした。
運ぶだけで疲れてしまいますし、山賊に襲われたら目も当てられません。
まして古代の硬貨は本当に石で出来ていた為、頻繁な移動なんてもってのほかでした。
このため商人や富豪は、貨幣はどこか厳重な警備の有る倉庫等に保管しておき、必要ならばその所有権のみを移すという形を取っていました。
それが長い間続きましたが、11,2世紀頃になると大きく様変わりしました。
金融技術の発達により、現代の信用創造に近い形になって行きます。
11世紀頃、ユダヤ人の迫害が起こったのです。
11世紀に、バチカンのキリスト教会がユダヤ人をほとんどの職業から追放した後、ユダヤ人にとって数少ない収入源として残ったのが、高利貸し(質屋)や金塊の保管人、両替商(貿易決済業)など、利子を取り扱うことが多い金融業であった。
>>金融の元祖ユダヤ人
またこの技術発展のためか、12世紀には「手形」と言う画期的な手法が開発されます。
手形とは大雑把に言えば"借用書があるツケ"です。
これにより商人たちは自分達の信用を担保に信用創造をすることが可能となりました。
手形とは一定金額の支払いを約束または委託する有価証券のことです。手形の紀元は12世紀頃、地中海沿岸の諸都市で両替商が使い始めたというのが通説になっています。…(中略)…異なった都市国家に住む商人の間では、何らかの方法で貨幣の両替、送金をする必要があり、それが手形を利用する原因になったようです。
>>手形の歴史
例えば、呉服屋Aさんと飲食店Bさんがいたとしましょう。
ある日、BさんはAさんの店で100万円分の服を買い、ツケ(手形)にしました。
一方AさんもBさんの店で80万円分の飲み食いをし、ツケ(手形)にしました。
ではAさんとBさんはいくらの現金をお互いに払えばいいのでしょうか?
答えは「BさんがAさんに20万円払う」です。
お互いツケが有るため、80万円分は相互に打ち消しあい、残った20万円分のツケを払えばいい事になります。
この手法を手形交換といい、この決済方法を差額決済と言います。
今回の登場人物は2人ですが、実際の商売では更に多くの人が関わります。
ツケを手形と言う書面にし、全く知らない第三者に手形が回ったりします。
これを利用すると、会計上はお金が増えます。
だってたった20万円分の現金で180万円分の経済活動が出来るのですから。
これは発行主体である各お店の信用を担保に、信用創造をしているからです。
現代でも手形による売買は行われています。
経済全体から見て金額は少ないものの、信用創造は銀行以外でもしっかりと行われているのです。
現在、「銀行を救済しないと信用収縮が起こり、企業活動や経済に悪影響がある」とされていますが、これは銀行が助かる為の詭弁です。
そもそもこういう事を言っている人の多くはエコノミストやアナリスト、そして銀行や証券会社出身の財務長官です。
彼らに喋らせれば金融業寄りの意見が出るのは当りまえです。
例えば手形決済を大型の手形交換所で一括して行えるようにし、加盟企業が不渡りしそうな場合、債権者の支払いは政府が保証するという仕組みにすればよいのではないでしょうか?
そうすれば手形は現金と同じ意味を持ち、取引に使われるでしょう。
どうせ経済危機で銀行にお金を入れているのです。
その分を其方に回すことは可能なはずです。
整備に若干の時間はかかる為、迅速性は下がるかもしれません。
危機になれば迅速性を求められますから、「だったら銀行のほうがいい」と言われそうですが、その結果が1年で再び高額報酬とマネーゲームですから、多分銀行にお金を出す方がコスト高です。
税金で救ってくれると胡坐をかいている連中には、目に物見せてやったほうが結果として良いと思います。
そしてそれは決して不可能なものではないのです。
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