何故銀行を救うのか?② - 昔のお金製造法
皆様こんにちは、今回は信用創造シリーズ2回目です。
「何故何も無い所からお金が生まれるのか?」についての昔話です。
今も昔も、無から有が生まれるという手法は中々受け入れがたいものでした。
昔は物々交換で、自分が出品すれば、それが別の"物"になって帰ってきました。
しかし現代では、お金と言う紙切れによって物を買ったり売ったりしています。
銀行振り込みなど、本当に自身のお金が減っているのか増えているのかわからない状態で、人間は生活しています。
別に普通の光景なのですが、よくよく考えてみればとても不思議なことです。
紙幣の原価なんて殆どただ同然です。
おなかが減った時にお札が食べられるわけではありませんし、火を灯す燃料にもなりません。
お金の原価を調べると、いかに多くの人がお札を"信仰"しているか分かります。
<紙幣>
・10000円:22.2円
・2000円: 16.2円
・1000円: 14.5円
<硬貨>
・500円: 30円
・100円: 25円
・50円: 20円
・10円: 10円
・5円: 7円
・1円: 3円
この数字も出所が曖昧なので正確さに欠けますが、以前見たニュースでも2000万円分の万札が100円とか200円とか言っていましたから、この程度でも不思議はありません。
誰かが言っていましたが、これは一種の宗教のようなものなのです。
こんなものが有り難がられるわけですから、そう言われても仕方ありません。
元々お金とは物々交換を円滑化するための道具なわけですから、それ自体には価値なんて必要ないのです。
これをニューメレール(numeraire)と言います。
ですから昔の人は紙幣のような紙切れではなく、金貨や銀貨を使っていました。
金や銀は古来から多くの人に(不思議と)信頼され、様々なものに交換できました。
ですからこれをそのまま使っていたわけです。
中には塩を使う部族もあったそうです。
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しかし、金貨を使うと色々と不便でした。
一つは重さです。
金の密度は19.3g/cm^3もあり、水の20倍も有ります。
2ℓペットボトルに金を詰めると、重さは40kgに達し、子供並みの重さになります。
ですから大量に持ち歩くには不向きでした。
もう一つは金貨のデザインに価値が無く、物質そのものに価値があった為、削り取りが横行しました。
例えば10gの金貨が手元に来た時、硬貨の端っこを0.1gだけ拝借したとします。
すると(大よそ)100枚の金貨で1枚の新金貨が出来るわけです。
元の金貨の重量はたった0.1gしか減らないわけですから、まず気付かれません。
しかも削り取りは両替をした時など、手元にお金が残らなくても出来るのでかなり横行しました。
しかし最初の人が0.1g、次の人も0.1g、次の次の人も0.1gとやっていた為、10人ぐらいの手に渡ると、新品であってもボロボロになってしまいます。
これは当時の政府としても頭が痛い問題でした。
しかもその後、発行元の政府まで同様のことをした(作成時に金をケチる)た為、この金貨制度も上手くいきませんでした。
結局、政府は金塊を保有し、その預り証として紙幣を発行しました。
これが兌換紙幣であり、この体制が金本位制(本位制)です。
この"金引換券"を一定枚数集め交換所に持っていくと、指定された量の金塊と交換してくれました。
引換券の偽造などはあったでしょうが、削り取りよりは発見が楽だったのでしょう。
流通過程での削り取りを摘発するのは、関係者が多いだけに容易ではないでしょう。
また、紙である為持ち運びにも便利です。
こうして紙幣が生まれました。
当時のお金と言うものは、金や銀によって裏づけされていたわけです。
昔は無から有が生まれていたわけではないのです。
しかし、金本位制には重大な欠点が有りました。
続く・・・
理経済:何故銀行を救うのか?③ - "信用"の源泉
理経済:何故銀行を救うのか?④ - 銀行なんて放っておけ
ちなみに、この兌換紙幣を最初に発行したのは政府ではなく民間だったそうです。
そもそも紙幣は金の預り証なわけですから、政府で無くとも発効できるわけです。
しかし、民間とは得てして(ずる)賢いもので、単なる交換券であっても一筋縄ではいかないものです。
その話はまた今度。
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