咽元過ぎれば熱さを忘れる② - AIGの悲劇
前回、死亡債と言う金融商品が俄かに活気付いていると言うお話をしました。
何でも、「死亡率は一定だから安定的な収入が得られる」との事ですが、多分そんなことはありません。
今回はその理由(の前座)についてです。
それを知る為に、一年前にAIGという世界的な保険会社に起こった悲劇を思い出してみましょう。
凡そ一年前、あるニュースが世界を駆け巡りました。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が12日、AIG格下げの可能性を明らかにしたことで、AIGは対応策を迫られた。先月の規制当局への報告によると、格下げされた場合145億ドルの追加担保差し入れが求められるという。
>>米AIGが資金不足に直面、PEとの交渉不調でFRBに異例の支援要請(08/09/15)
これ等のニュースにより、08年9月11日には1株351$(分割調整済み)だったのが15日には95$まで激減しました。
当時500億$以上あった時価総額は、一気に100億$超になってしまいました。
当然株主は大損、加えて本来支払いが保証されているはずの債権者(保険加入者含む)まで、本当に払われるのか怪しくなりました。
社債等を持っている投資家達は敏感に反応しました。
契約破棄されるかもしれないと、売りまくりました。
信用取引の証拠金と似ていて、資産を担保に借金をしていれば、その資産価格が下がれば何らかの形で穴埋めが必要です。
日本もバブル崩壊後の地価下落で、多くの企業が同じ事をしたようです。
債権の価値下落で、AIGは1兆5000億円という多額の追加資金を要求されそうになりました。
こうなると悪い噂が別の悪い噂を呼び、一気に会社が傾きました。
そこで問題になったのはCDSと言う"保険債務"です。
前述の通り、会社が倒産すれば保険料が支払われなくなる可能性が大きいです。
しかもAIGの保有していたCDSは4000億$だそうで、破綻すれば業界に1800億ドルの損失を与える可能性が有りました。
Bloomnerg:AIG:政府管理下に-株主価値は喪失との懸念で株価一時44%安
結局FRBやアメリカ政府から多額の資本注入を受けることで何とかなりました。
ここで問題になるのは騒動の登場人物です。
主演はAIG、キーマンはFRB、保険の加入者は腋役、基脇役です。
債権者はAIGの悪い噂を聞きつけ、それらを売っぱらいました。
しかし、この段階で保険加入者が多額の保険料を受け取ったわけではありません。
最終的にAIGは10兆円近くをCDS保険料として支払ったわけですが、この段階ではまだリーマン破綻と前後しており、支払も多くなかったのでしょう。
この騒動は悪い噂で浮き足立ったウォール街が作り上げたもので、保険料の支払が急激に増えて傾いたわけではないわけです。
続く・・・(;´Д`)ウウッ…
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