リーマンの攻勢 - 失敗だらけの買収劇
野村證券の、ロンドン証取での売買シェアが一番になったそうです。
6月のロンドン証取での株式売買シェアは6.27%で3位だったが、7月は7.45%と一段とシェアを伸ばした。リーマン買収前の昨年9月時点のシェアは0.1%以下(151位)。
>>野村、ロンドン証取でシェア首位に 7月の株式売買
もともとのシェアは殆どゼロで、リーマン買収によって大幅に伸びたわけですから、野村が頑張ったのではなくリーマンのおかげなわけですね。
買収効果といえば聞えは良いですが、要するに看板がリーマンから野村に変わっただけという事です。
以前にも書きましたが、リーマンは破綻後、その一部を野村に買収されました。
しかし、その待遇はもともとの野村社員よりも遥かに好待遇です。
両社の溝は深いままです。
しかも色々調べていくと、どうやら野村社員が威張れるのは国内だけらしく、海外では元リーマン社員の方が威張っているとのこと。
確かに売買シェアの動向を見る限り、彼らの方が実績を出していますし、アジア・太平洋と欧州の株式部門のトップは元リーマン社員です。
そう考えれば、彼らが威張っていても不思議はありません。
プレジデントロイター:元リーマン社員が転職してきたら―黒木 亮
そもそも、買収や合併はかなりリスクの高い手法です。
単純にお金がどうとか、地合がどうとかいう問題ではなく、もっと人間工学的な欠陥が有ります。
統計的に言えば、4社に3社は失敗しているような状態です。
IBM:グローバル化と企業のバーチャル統合 PDF 7ページ
統合すれば、スケールメリットが出て資材調達や販売面で交渉力が増し、更にブランド力の向上や業務の重複を省くことによるコストカットが見込めます。
ですから私などは投資家として、すぐ買収しろ統合しろと言っていますが、実際には結構面倒で中々上手くいかないのが現状です。
私の会社も私の入社直前に他者を買収したのですが、その後の騒動の収集はかなり骨です。
世間や市場ではかなり歓迎されていましたが、その後の苦労は彼らには分からないでしょう。
交流が少なく疎遠感が有るとか、相手からの嫉妬の目とか、もう色々。
買収が失敗する原因を見てみると、文化の違いとか目的の不一致とか、人間臭い理由が多いです。
シェアがどうのとか、ブランドがどうのとかいう話は、あまりないようです。
野村とリーマンの溝の深さも、給与体系という企業文化の違いから来てます。
また、リーマンなどの投資銀行系は、ヘッジファンドのような有価証券の売買業務が目立ちます。
一方、野村はバリバリの営業系。
野村に就職した先輩の話では、「彼ら(野村證券本体の社員)は社内でサイヤ人と呼ばれている」そうです。
営業と言う戦闘をする、戦闘民族なんだとか。
もろ体育会系だそうです。
玄関が一緒になったからといって、皆が仲良く出来るとは限りません。
野村とリーマンは国を隔てた家庭内別居をし、段々とかかあ天下(亭主関白?)になっていきそうです。
買収劇とは失敗だらけであり、そんなに簡単ではないんですね。
ちなみに、統計的に見て明らかに失敗する可能性が高いのに、何故経営者は合併買収を繰り返すのか、という事は経営工学者達の大いなる謎です。
確率だけ見れば宝くじより分が悪いんですからね(あちらは期待値ですが)。
心理学や行動経済学に言われるような自惚れ等、幾つか説は有ります。
個人的に面白いと思うのは、「企業規模とCEOの年収の相関関係」です。
一般に、企業規模が大きくなるほど社長の年収は増えます。
ダイムラーとクライスラーの時のように、合併後数年間業績がよければ、社長達はより高額な報酬を得て次の会社に行けます。
あるいはそれが、合併買収が活発化する原因なのかもしれません。
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