米CIT問題と日本のノンバンク問題② - 総量規制とサラ金難民
前回からの続きです。
アメリカのCITの破綻による影響を話す前に、まずは日本のグレーゾーン金利撤廃による影響の事を書かせていただきます。
理経済:米CIT問題と日本のノンバンク問題 - 総量規制とサラ金難民
さて、まずはそもそもグレーゾーン金利とは何かと言う事ですが、これは「利息制限法に定める上限金利は超えるものの、出資法に定める上限金利には満たない金利のこと」です。
貸金業者はこれに拘束されます。
今ひとつ分かり難いですが、かなり大雑把に言うと、「法律ではここまでの金利しか取ってはいけません(利息制限法)。しかし、"個人的に"貸すならもう少し上でもOK(出資法)」と言う部分です。
返す方も"善意で"多めに返済することになります(みなし弁済)。
この為、今までサラ金業者はいろんな人に"個人的に"お金を貸していました。
これにより年30%近い金利での貸し出しが可能でした(完全な個人だと100%超も可能なようです)。
ちなみに、クレジットカードも同じぐらいの高利貸しです。
昔、三和ファイナンスが1ヶ月利息無料と言う手法を使っていましたが、これはクレジットカードと同じ仕組みです。
グレーゾーン金利の解消が決まった後に、三菱UFJニコスが大量リストラを発表したのは記憶に新しいです(多くの人は記憶の彼方でしょうが)。
今まで、多くの銀行から借りられない中小企業は、彼らからお金を借りることで何とか事業を回していました。
しかし上限金利が下がることで、過払い金返還請求等で一時的には潤いますが、結果として審査が厳格化して借りられなくなりました。
金利は信用の裏返しです。
金利が高いと言うことは、それだけ信用されていないと言うことです。
例えば私が、
「何も言わずに100万円貸してくれ (人><。)」
と言って、貸してくれますか?
普通は貸しませんよね。
つまり金利∞です(もし10億ぐらい集まるなら今の会社辞めて、友人やsu-Zさん誘ってヘッジファンド作りますww)。
何に使うのか、収入はいくらなのか、銀行ならば根掘り葉掘り聞いてきます。
しかし今までサラ金は、「むじんくん」等のように、見た目のみで2,30万円の融資をしていたわけです(他でいくら借りているかはある程度分かります)。
高い金利も致し方ないでしょう。
グレーゾーン金利が話題になった時、ある債務者が「銀行の金利が低いならそっちを借りていた」と憤慨していましたが、彼女はきっと今、誰からも借りられずに悩んでいるのでしょう。
銀行がホイホイ貸してくれるのなら苦労しません。
上限の引き下げにより、サラ金でさえも根掘り葉掘り聞くようになってしまいました。
クレジットカードのポイント還元もめっきりです。
折しも、米国発のサブプライムローンが日本を直撃し(被害がないなんて大嘘)、消費者金融や地銀が多額の損金を計上する羽目になりました。
額こそ小さいですが、地銀は図体も小さいので致命傷になりかねません。
データが古いのですが、こちら↓のサイトに色々書かれています。
明治大学BreakOuts:No,23 <サブプライム>国内金融機関の損失、1兆8000億円超
決算書を見ても、08年9月(中間)は桁が一つ小さくなっていたり、いきなり巨額赤字になっている所も結構有ります。
とまあこんな感じで、消費者金融と、其処からお金を借りている中小企業を取巻く状況は酷いものです。
何所の指標を見ても▲のマーク(マイナスの意味)ばかりです。
経済学的に見れば、上限金利を下げてマネーサプライを絞っているわけですから、ある意味当然の結果です。
消費者に最も近いであろう貸し金業者を痛めつけることにより、末端の消費者を痛めつけることに繋がってしまったわけです。
かくして、グレーゾーン金利撤廃、基改正貸金業法は、金融商品取引法、改正建築基準法と並んで、官製不況の3Kに含まれることになりましたとさ。
めでたくない…。
たぶん続く…
理経済:米CIT問題と日本のノンバンク問題③ - 総量規制とサラ金難民
理経済:米CIT問題と日本のノンバンク問題④ - 総量規制とサラ金難民
なお、CITは首の皮一枚で破綻を免れました。
取り合えず7月中の破綻は無さそうです。
追記:
やはり銀行よりサラ金の方が身近なようです。
遠くの親戚より近くの他人ということかな(ちょっと違うかな)。
「ユニオン」と「労働ニュース」アーカイブ:消える夢のマイホーム…「もう限界」給料減で売却 大半が消費者金融へ…半年が限度【ZAKZAK】
ちなみにこのネタは第3回に繋がります。
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